田中カレン&仲道郁代
仲道郁代(ピアノ)、田中カレン(作曲)
子供も大人も自由に聴いて欲しい『地球』
田中カレンと仲道郁代に話を聞いたのは、『不思議ボール』と題されたコンサートの直後だった。この舞台の前半は、長谷川義史の絵と共に、仲道が田中の作品を演奏し、お話を語るというもの(内藤裕敬作・演出)。後半は仲道演奏によるショパンやモーツァルトのミニ・コンサートだったが、3歳以上が参加でき、文字通り老若男女が楽しめた。
『不思議ボール』で演奏された田中作品は、CD『地球』に収録されている。『地球』は、田中・仲道コンビのCD『星のどうぶつたち』、『光のこどもたち』に続く3作目。どれも、子供のための作品集だ。
「娘が生まれてカレンさんとの制作が始まり、1作目は私と娘の手を重ねた写真が表紙です」
子供達へ音楽を通して語ることの重要性を二人はみつめているようだ。さらに『地球』の制作は、東日本大震災と重なり、特別なものに。
「作曲は昨年の2月には出来上がっていて、絶滅危惧に瀕する野生動物を取り上げた『光のこどもたち』の続編にしたのです。地球そのものへの危惧です。そこにあんな震災が起こってしまい…」
ロサンゼルス在住の田中も、トップ・ニュースで流れる東北に、心を痛めたと当時を振り返る。録音は、仲道が開館当初からレジデントアーティストとして関わる宮城県七ヶ浜町のホールで行った。ここは避難所ともなったところだ。
「舞台後ろのガラス張りからは海が見えるのです。その写真はCDにも載せましたが、《海》という曲を弾いていると、美しい海が内包する恐ろしさや人の力の及ばないものを、それと同時に日々の営みの愛おしさや大切さも感じました。不思議な録音でしたね」
でも、と仲道は続ける。
「カレンさんの作品は一つ一つがとても豊かで、多彩にイメージを喚起させる。だから私は地球を大事にと大仰に言うのでなく、様々に感じて欲しい。音楽は色んな意味があり、答えは一つでないのです」
田中も大きく頷く。
「未来を担う多くの子供たちが、私の作品を弾いてくれることはとても嬉しいですね。難解な現代音楽では、演奏者も限られてくるので」とベリオに師事した田中は言う。
「ベートーヴェン、モーツァルト、そして田中カレンは私の大きな柱」と語る仲道郁代に応えて、「郁代さんに作品を弾いていただき、舞台のコラボに参加できて、作曲者としてとても嬉しく光栄」と田中カレン。今後もこのゴールデン・コンビは続いて欲しい。次作が楽しみだ。
LIVE INFORMATION
『ピアノとスライドが謎を解く 不思議ボールの正体を!不思議ボール』(『地球」を全編に使った舞台作品)
出演:仲道郁代(P)内藤裕敬(脚本)長谷川義史(絵)
12/23(日)ひたちなか市文化会館
12/24(月・祝)三芳町文化会館 コピスみよしホール京サントリーホール
12/26(水)北見芸術文化ホール
『オール・モーツァルト・プロ』
出演:仲道郁代(P)神戸市室内合奏団
2/7(日)サントリーホール