MONGOL800 『GOOD MORNING OKINAWA』
おはよう、オキナワ! 結成15周年イヤーとなる今年、初めて自分たちの生まれ故郷を大きくフィーチャーした新作が完成。いま、そこにある思いとは?
MONGOL800から、2009年以来となる6枚目のニュー・アルバム『GOOD MORNING OKINAWA』が届いた。これが本当に素晴らしい。表題に初めて〈OKINAWA〉という言葉を入れ、内容自体も自分たちの地元・沖縄と真正面から向き合ったものになっていることから、彼らの伝えたいことがダイレクトに響いてくる。またバンドの音もかつてないほど生々しく、3人の表情やクセが透けて見えるようなプレイが詰まっているのだ。それは先立ってリリースされたベスト盤『800BEST -simple is the BEST!!-』の存在も大きかったそう。
「ベスト盤を作る際、ファンの人たちに好きな僕らの曲を3曲ずつ選んでもらったんですが、その堂々第1位が“DON'T WORRY BE HAPPY”(初作『GO ON AS YOU ARE』収録)だったんですよ。あれは俺たちの始まりの曲だから、それもあって嬉しくて。当時を振り返ると、(作品は)ホント手の届く距離の人にしか向けてなかったんですよね。そういうことを思い出したり、あと去年は沖縄の本土復帰40年だったのもあって、じゃあ思いっきり〈沖縄〉をタイトルに入れようと。感覚的にはファーストとセカンド(『MESSAGE』)を足して2で割ったような、そういう意識はあるかな」(上江洌清作、ヴォーカル/ベース)。
聴き手との距離が近かった初期のムードに立ち返りながら、そこにキャリア15年を経た〈いまのモンパチ〉が加味された作りだ。なかでも、故郷に対する皮肉を込めた痛烈な言葉が響く“明日から印象派”は、クラッシュ“London Calling”を彷彿とさせる曲調で、そこにジャジーな演奏を絡めたりと、いままでになかった楽曲アプローチが新鮮に響く。
「この曲は、絶対柔らかい言葉は乗らないだろうと思って詞を書きました。一昨年ぐらいから、ようやく本土のニュースでも米兵が起こした事件とかが報道されるようになったけど、沖縄では前から日常茶飯事なんです。怒る時は怒らなきゃいけない。何か言わないと何も始まらないんですよね。沖縄にはいいところもあるけど、それだけじゃないから。そういう意味で、沖縄の人に向けた皮肉を入れてみたんです。復帰41年目を迎えて、自分たちの世代がちゃんと言わないといけないなと。あの島はひとつ歯車が噛み合えば物凄い力が生まれると思うから」(上江洌)。
「一定のリズムを叩くループ系のドラムってあんまりやったことがなかったから、この曲は難しかったですね。そのジャズっぽいパートは3人でセッションするなかで出来たもので、実はかなり前からあったんです。でもこのフレーズを入れられる曲がいままでなくて、今回やっと入れられました」(髙里悟、ドラムス/ヴォーカル)。
また、本作のイントロ曲であるインスト“KAGIYADE-FUU”では沖縄の伝統的な祝儀舞踊である“かぎやで風節”が引用されたのをはじめ、随所に沖縄的なキーワードが散りばめられている。その極めつけが、儀間崇(ギター/ヴォーカル)作“カマドー小”。かの地では馴染み深いアメリカ産のアレコレが並ぶユニークなナンバーだ。
「もともと一人で歌ってたものなんだけど、今回のアルバムのテーマなら丁度いいやと思って。ここに出てくる言葉、意味わかります? 〈カマドさん〉とか〈WD-40〉とか、ホント地元の人にしかわからないと思うんだけど、本土の人が沖縄のことを意識するきっかけになればと」(儀間)。
ただ盲目的に故郷を礼賛するのではなく、良い面も悪い面も俯瞰の視点で綴った言葉を、彼ららしい陽気なサウンドに乗せているところに、15年間着実に成長してきたMONGOL800の説得力がある。そして本作は沖縄に焦点を絞りながらも、リスナー各々の日常にも置き換えられる普遍的なメッセージが織り込まれているのだ。
▼MONGOL800のベスト盤『800BEST -simple is the BEST!!-』(TISSUE FREAK)
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2013年02月21日 19:30
更新: 2013年02月21日 19:30
ソース: bounce 352号(2013年2月25日発行)
インタヴュー・文/荒金良介