インタビュー

BO NINGEN 『Line The Wall』



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「僕がロンドンに移住した時、格好良いバンドはいるんですけど、リズム・セクションがいまひとつおもしろいと思える生バンドがいなくて。だから、BO NINGENを始めた時は最初からカヴァーもしなかったですし、リファレンスにしたバンドもいないんです。その代わり、ブリアルとかマーラ、日本人だとGOTH-TRADさんのような、低音がちゃんと出ていて、グルーヴを出せているベース・ミュージックに影響を受けましたね」(Taigen Kawabe)。

BO NINGENという奇妙な名前を持つバンドが俄かに注目を集めるようになったのは、2年ほど前のことだろう。もちろん当初は、〈ロンドンを拠点に活動する日本人バンド〉という話題性が先行するフシも多少あったかもしれないが、彼らのライヴを一度でも観てみれば、単なるガレージ・ロックともありがちなサイケともつかない、でも実に洗練されたロックンロールを鳴らしていることに驚かされるはずだ。

「他の音楽に当てはめて、それをめざしていくよりも、最初からわが道を行く形で曲を作っていました。何かのフィルターではなく、自分たちのフィルターを通して音を作る作業ですよね。安易な打ち込みと生演奏の融合みたいなのもちょっと違うと思っていましたし……。そういった意識が今回のアルバムのレコーディングに結実していると思います」(Taigen)。

すでに〈本国〉イギリスで昨年10月にリリースされ、地元メディアでも高い評価を得たセカンド・アルバム『Line The Wall』が、いよいよ日本盤として届けられることとなった。

「ファーストは録ってそのまま加工せずに完成させたんですけど、今回はオーヴァーダブを試してみたりとか、ライヴではできないことをやってみました。ミックスの段階までメンバー同士で意見を交換しながら仕上げていったんです。ベース・ミュージックのおかげで低音の概念が変わった、その影響がファーストよりもハッキリと出ていると思いますよ。例えばドラムのキックを上にしてベースを下にする、というようなアイデアも、プロダクションの段階で試してみたんです」(Taigen)。

「僕自身はデレク・ベイリーのようなタイプのギタリストが好きなんです。ウィルコのネルス・クラインもいいですよね。そういうところから、ギターを使って立体的でクリアな音像を作りたかったっていうのがありました。もともとはTaigenくんがベースを弾いてなかったこともあって僕がベース的な役割だったんですけど、そういうところはもう気にしなくて良くなったので、今回はあんまり曲ごとに音を変えずに、ひとつの音で奥行きを出していくような感じにしました」(Kohhei Matsuda)。

2010年の初作『BO NINGEN』は音がグシャリとつぶれて聴こえるところにおもしろさがあった。しかし今回は音のひとつひとつで奥行きのある空間を作り上げている印象だ。特にKohheiとYukiによる2本のギターの絡みは、昂揚感のある演奏のなかでリリカルな響きを残していくところが魅力だ。そしてメロディーが耳に残る。ジム・オルーク在籍時のソニック・ユースや、エイドリアン・シャーウッドと組んだ頃のプライマル・スクリームのような、ドラッギーな感覚に包まれた作品と言っていいだろう。

「僕らは灰野敬二さんが大好きなんですけど、灰野さんのライヴを観た時にボロボロ泣いちゃって——〈浄化〉された感覚があったんです。そういう感覚をもたらす〈高まり〉みたいなものを、このバンドでも伝えていきたいですね。僕らの歌詞は確かにドラッギーで脳内風景的かもしれないですが、その内容を伝えたくて歌詞にしているんじゃない。音から出てきたものが浄化される要素だったり高まりに繋がるものだったりして、それが自然と歌詞に出ているって感じなんです」(Taigen)。



PROFILE/BO NINGEN


Taigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)、Kohhei Matsuda(ギター)、Yuki Tsujii(ギター)、Akihide Monna(ドラムス)から成る4人組。2006年、ロンドンのアートスクールに通っていたメンバーによって結成。2009年にアナログ/配信で発表した『Koroshitai Kimochi EP』が現地で話題となり、〈Offset Festival〉などのフェスにも出演。2010年に初作『Bo Ningen』をリリース。〈NME〉をはじめとした地元メディアからも注目を集め、UKツアーのみならず、日本盤の発表後は日本でのツアーも成功させる。2011年にミニ・アルバム『Henkan EP』をリリース。日英を跨いだ活動を精力的に行うなか、2月27日にニュー・アルバム『Line The Wall』(Stolen/ソニー)が日本盤化される。

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掲載: 2013年02月27日 17:58

更新: 2013年02月27日 17:58

ソース: bounce 352号(2013年2月25日発行)

インタヴュー・文/岡村詩野