インタビュー

Karen Mok

東洋のビリー・ホリデイに!? 香港のトップ女優がジャズでも魅せる!

中華圏を代表する映画スターで、歌手としても華やかなキャリアを重ねて来た彼女。世界デビュー盤となるジャズ・アルバムは随所に〈チャイーニーズ・タッチ〉が散りばめられた艶やかなスタンダード・ナンバー集に仕上がっている。

「ジャズに目覚めたのは大学時代のロンドンで。中古ショップで『エラ・アンド・ルイ』のようなアルバムをみつけては寮で聴いていた。だからスタンダード曲を歌うときは作者やヴォーカルの巨匠たちに対する畏敬の念を感じずにはいられないの。ただし、大切なのは模倣ではなく、名曲に自分なりの解釈を加えて新しく作り直し、現代の息吹を伝えていくこと。それこそが最大のトリビュートだと思う」

加えてスティングなどロック/ポップな佳曲もカヴァー。ビートルズの《ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス》やポーティスヘッドの《サワー・タイムズ》には自ら古箏の演奏でも参加。

「選曲に関しては少し大胆なチョイスだったかなとも思うけれど、とにかく楽しかった。それにジャズって懐が深くて、いろいろな要素を呑み込んでもびくともしない逞しさがある。だから今回は中国の楽器やミュージシャンを起用した上海レコーデイングによる、私のスタイルでジャズを発信したかったの」

そんな彼女の試みをプロデューサーとしてサポートしたのは、未来派レーベルJAZZLANDを主催するノルウェーの鬼才、ブッゲ・ヴェッセルトフト。

「彼は音楽に対して常に情熱的だし、バックグラウンドの違う様々なミュージシャンと一緒に仕事をするのを得意としているので凄く心強かった。私が古箏の演奏ができると知って、『それいいね、絶対やろうよ』と背中を押してくれたのも彼だったし、出来上がった音を聴いて誰よりも面白がってくれた」

ミュージシャンは様々なルーツの中国系を中心にアジアの凄腕が集結。日本が誇る渡辺貞夫が2曲でゲスト参加しているのも注目だ。また中国語のナンバー2曲もアルバムのコンセプトに花を添えている。

「《千もの船を海に浮かべた顔》は、以前のアルバムのために書いてずっとしまってあったのを思い出して、今回みんなの前で披露したら好評だったので収録を決めたの。《上海ナイツ》は1930年代にあの街が〈東洋のパリ〉と呼ばれて華やかだった頃、当時のディーヴァ達によって歌われていた曲。メロディは中国的だけどジャズのスタイルを持っていると思う。歴史的なホテルでPVを撮影(YouTubeで視聴可能)した時、東洋のビリー・ホリディになったみたいな気がして楽しかったわ(笑)」

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年05月08日 12:53

ソース: intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)

interview&text : 東端哲也