LAU
エイダン・オルーク(写真中央)
フォーク、トラッドの枠を超え、現代最高峰のバンドへ
英BBCラジオのフォーク・アワードでベスト・グループ賞を4回も獲得しているスコティッシュ・フォーク・バンド、ラウー。卓越したテクニックと独創的なセンスで、トラッド・フォーク界で頭ひとつ抜きん出た存在となっている彼らだが、最新作となる4作目『レース・ザ・ルーザー』の内容がちょっとスゴい。本誌前号に掲載されたレヴューで「レディオヘッドやウィルコと同時代を生きる音楽として聴くべき、最高傑作の誕生」とあったが、野心的な音の冒険が繰り広げられている本作に触れたなら、誰だってそう煽り立てたくなるってものだ。フルックのブライアン・フィネガンらと新たに組んだ「kan」の公演のために来日していたエイダン・オルーク(フィドル)にそのレヴューのことを伝えると、ニッコリ笑みを浮かべていた。
「今回の作品で僕らが方向転換をしたって捉えた人も多いんだけど、自分たちとしてはごく自然な流れでここに辿り着いたと思っている。前作『アークライト』を発表してから、ジャック・ブルースやノーザン・シンフォニア管弦楽団らと共演を果たしたんだけど、そこで学んだものを整理しながらアルバム制作に臨んだんだ」
得難い経験をした3人が更なる飛躍を目指した時、新たなプロデューサーとして登場したのが、ポートランド在住の売れっ子、タッカー・マーティンだった。
「彼は音楽的にすごくオープンな人。全体のヴァイヴや雰囲気を大事にし、僕らが自由にやれるようにも配慮してくれたんだけど、仕上がりを聴くとそこにタッカーがいたって確実にわかる感じになっているのがすごいよね。それに、エレクトロニクス的な試みを積極的に行ってくれたことも大きかったな。まだマーケットには出回っていない新しいベース・シンセサイザーを使ってくれたりしてね。予期してなかったから驚いたんだけど、特別なギフトだったよ」
本作を聴いたとき、タッカー・マーティンがビル・フリゼールらと組んでいるバンド「Floratone」の音楽に相通ずるものを感じ取ったのだが、やはりエイダンとしては同じインスト・バンドとして意識するところがあったようだ(それよりもタッカーを選ぶ決め手として、スフィアン・スティーヴンスを手がけていたことが大きかった、と笑いながら教えてくれた)。
3人がいっそう緊密につながり合い、タッカーも交えて刺激し合いながら生みだした野心的なトラッド音楽が並ぶ『レース・ザ・ルーザー』。バンドの関係性は、いまがもっとも調和がとれた状態なんだと自信たっぷりに話すエイダン。6月の来日公演への期待が思いっきり膨らむじゃないか。待ち遠しいぞ。
LIVE INFORMATION
『 ラウー来日公演2013』
○6/17(月)梅田 Club Quattro
○6/18(火)名古屋 Club Quattro
○6/19(水)渋谷 Club Quattro(ゲスト:サム・リー)
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