インタビュー

LONG REVIEW――でんぱ組.inc “でんでんぱっしょん”



ネガティヴなエモさからポジティヴなエモさへ



でんぱ組.inc_J



前回のシングルに収録された“W.W.D”は、メンバーがトラウマティックな過去を告白するという、ある意味で〈ネガティヴにエモい〉1曲だったのに対し、ニュー・シングルの表題曲“でんでんぱっしょん”は、終始ハイテンションでアッパーに駆け抜ける〈ポジティヴにエモい〉ナンバーとなった。高速のダンス・ビートやラウドなギターがみっちり詰め込まれたサウンドと、ドラマティックなメロディーとが、セリフやラップなども交えながら目まぐるしく展開していく。この過剰な情報量が、まさにでんぱ組.incならでは。否応なしに昂揚させられる、鉄壁のキラー・チューンと言えるだろう。

また、全9形態にはそれぞれで異なったカップリング曲が収められており、まずCD+DVD盤と通常盤で聴くことのできる“ORANGE RIUM”は、今年1月に開催されたZepp Tokyoワンマンで初披露された楽曲。優美なメロディーで歌をしっかりと聴かせるロック・チューンだ。そしてGAME盤にはスマートフォンの無料ゲーム「先生! 次はバトルの時間です。」のテーマ・ソング2曲を収録。タイトル曲はキュートでオーセンティックなアイドル・ポップに、“少女アンドロイドA”は情緒たっぷりの歌謡ロックに仕上がっている。

加えて、各メンバー盤には、個々で“でんでんぱっしょん”のリミックスをフィーチャー。Ryu☆はさらに加速させたハッピー・ハードコアに、DJ'TEKINA//SOMETHINGはEDMマナーの4つ打ちに、アップアップガールズ(仮)などを手掛けるPandaBoYはドラムンベース寄りのカラフルなトラックへと変換している。

そういったダンス・ミュージック群とはある意味で対照的なのが、凛として時雨のピエール中野による〈ピエール中野が叩いてみました Remix〉。文字通り、原曲のビートを中野のドラムスに差し替えており、もとより密度の高いサウンドに暴力的なドラミングが加えられたことによるカオスな音像が凄い! 同様の思い切った仕事を見せているのがやけのはらで、トラップ的なつんのめり気味の倍速ビートを敷き、徹底的に音を抜いた隙間だらけのトラックに仕立てている。意外なようで納得のゲスト(?)によるラップ・パートがアダプトされているのも聴きどころだ。

そして、もっとも原曲から飛躍したサウンドを作り上げているのが、作曲者であるWiennersの玉屋2060%。オリジナルのパートを細かく切り刻んで再構築し、まったく別物と言い得るダンス・トラックを作り上げている。でんぱ組.incのハチャメチャでポップなスタイルを好むリスナーであれば、ここにおける玉屋の大胆かつ緻密な手つきにも、きっと魅了されるのではないだろうか。


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掲載: 2013年05月29日 18:02

更新: 2013年05月29日 18:02

文/澤田大輔