INTERVIEW(2)――マスタリングは超能力の世界
マスタリングは超能力の世界
――ロック・バンドを巡る状況もどんどん変わっていますが、筋肉少女帯は独自のポジションをキープし続けていて。
「独自すぎるだろ、とは思いますけどね。音楽的にはハード・ロックなんだけど、歌詞は中2病っていうね。いまはそういったハード・ロック系のバンドもあるんだけど、確かに変わったポジションにはいるんだろうなって思います。例えばさ、僕らって〈ROCK IN JAPAN〉に毎年のように出させてもらってるんですよ。でも、取材で呼んでもらったことはほとんどないんだよね(笑)。あれって、どういうことなんだろう? 独自なんですね」
――(笑)〈フジロック〉に出たと思ったら、アイドルと共演したり。活動のスタイルも独自路線ですからね。
「そうね、ももクロちゃんとも共演させてもらったし。あとね、思ってもみないような広がり方をすることも多いんですよ。筋肉少女帯の曲を使ったミュージカル(〈アウェーインザライフ〉)を水野美紀ちゃんがやったり。モーニング娘。も筋少の曲“再殺部隊”を舞台でやってくれたし(〈ステーシーズ 少女再殺歌劇〉)、AAAのにっしーさん(西島隆弘)が主演した、大槻ケンヂをモデルにした演劇(〈リンダリンダラバーソール〉)もあって。“日本印度化計画”と“高木ブー伝説”を歌ってくれたんですよ、にっしーさんが。たぶん、若いときに筋肉少女帯の音楽を聴いてた人たちがクリエイターになって、いろんなことをやってくれてるんだと思うんですけど。嬉しいですね、ホントに。感謝です。光栄です」
――さまざまな要素を含んだバンドですからね。そのぶん、影響も広範囲に及ぶというか。
「やっぱりね、各メンバーのキャラがバラバラだってことじゃないですか。そのおかげで全方位的なバンドになったんじゃないかなあ」
――音楽的にはハード・ロック、ヘヴィー・メタルが軸になってるわけですが、それは大槻さん自身のルーツとも重なってるんですか?
「ハード・ロックはねえ、世代で言うと、(レッド・)ツェッペリンとかディープ・パープルは後追いで、ちょうどレインボーとかが流行ってたんですよね。“All Night Long”っていう曲とか、アルバムで言うと『Difficult To Cure』とかね。あとはジャーニーの“Separate Ways”とか、マイケル・シェンカーが人気で。ただね、僕の家には小さいラジカセしかなくて、レコードプレイヤーを持ってなかったんですよ。だから、内田(雄一郎、ベース)君にダビングしてもらって、カセットで聴いてました。他には何かあったかな……あ、そうだ。浜田麻里さんのファースト(83年作『Lunatic Doll~暗殺警告』)。あれはよく聴いたなあ」
――〈麻理ちゃんはヘヴィ・メタル〉ですよね。
「そうそう(笑)。読者の皆さんに言っておきたいんですけど、浜田麻里さんってモダンチョキチョキズのほう(濱田マリ)じゃないですからね……って、モダチョキも若い人は知らないかもね(笑)」
――(笑)ということは、そこまでハード・ロックやメタルにハマってたわけではないんですね。
「そうですね。いまの筋肉少女帯に関しては、橘高(文彦、ギター)さんが引っ張ってくれてるところが大きいんですよ。彼はもう、ハード・ロック原理主義者ですから。今回のアルバムね、完全にハード・ロック・バンドの音作りだと思うんですよね。バスドラが細かく聴こえてくる感じとか。それを聴いて〈あ、いまはそういうふうになってるんだな〉って知ってるっていう。音的な部分に関しては、あんまり関与してないんです。メンバーを信頼してるので」
――音楽的な部分に対する関わり方も、時期によって変わってるんですか?
「うん。昔はね、生意気にもいろいろ言ってましたからね(笑)。音楽のことなんか全然わかってないのに。だって、トラックダウンとかマスタリングのときもいましたから。いまは行かないね。特にマスタリングなんてね、あれはもう超能力の世界ですよ」
――超能力(笑)。
「高度な音感を持った選ばれし者たちのもの。〈この音を少し上げて〉とか。僕は全然わからない。いいんですよ、そういう人がバンドにいても。信頼できるメンバーがいるから。お世話になってます。筋少は達者だから、みんな録音も早いよ。ドラマーの長谷川さんなんかもホントに上手いから、数日で録り終わっちゃうし。で、完璧っていう。バブルの時期は〈青山のスタジオを1か月ベタ押さえ〉とかやってたけど、そんな必要はまったくないですね。そう言えば昔って、海外レコーディングやってるバンドが多かったですよねえ。何であんなことやってたんだろう……いろんな時代があった」
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