インタビュー

LONG REVIEW――筋肉少女帯 『公式セルフカバーベスト 4半世紀』



〈中2病の神〉がみずからを祝福



筋肉少女帯



〈そのバンド/本当はいなかった/25年/見てたのは自分の心さ〉――この歌い出しから、グッと心を掴まれる。とにかく新曲“中2病の神ドロシー”が素晴らしい。みずからのバンドのやってきたことを〈四半世紀 幻〉〈四半世紀 ペテン師〉と、そして〈中2病の神様さ〉と高らかに歌う。

このベスト盤に収録の“蜘蛛の糸”なんかがまさにそうだけれど、筋肉少女帯というバンドが歌っていたのは、〈中2病〉という言葉が生まれる遥か前に、まさにそのメンタリティーを戯画化したような世界だった。オーケンらしいユーモアと諧謔で、そんなバンドの核心を鋭く射抜くような言葉を歌う新曲。しかも、88年から98年まで筋肉少女帯に在籍していた太田明(ドラムス)が、15年ぶりにレコーディングに参加している。つまり、一世を風靡した〈90年代の筋少〉のメンツがいよいよ再集結したことになる。いろんな意味で、25年続けてきたバンドにしか歌えない重みが込められている。

もうひとつのヘヴィーな新曲“妖精対弓道部”に加えて、アルバムには“日本印度化計画”や“香菜、頭をよくしてあげよう”など11の代表曲を収録。大槻ケンヂ(ヴォーカル)、橘高文彦(ギター)、本城聡章(ギター)、内田雄一郎(ベース)の4人に三柴理(キーボード)、長谷川浩二(ドラムス)のサポートを加えたいまのメンバーで再レコーディング。過去曲は、ジャズっぽくリアレンジされた“パノラマ島へ帰る”のようにかなり変化したものもあるが、基本的にはオリジナルのアレンジや方向性を踏襲したものがほとんど。つまり、いまのメンツで、本気でブラッシュアップした、ということだ。

まさに、〈中2病の神〉であり続けたバンドのキャリアをみずから祝うような一枚。


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掲載: 2013年05月29日 18:01

更新: 2013年05月29日 18:01

文/柴 那典