Karen Souza
オールドファッションを追求する、アルゼンチン出身のヴォーカリスト
流麗なストリングスに続いて、アンニュイなヴォーカルが空間にふわり漂うように流れる。とてもエレガントでクラシカルな雰囲気。その音楽を写真で代弁しつつ、何か物語を想像させる素敵なジャケット。輸入盤でいち早く話題になったアルゼンチン出身のカレン・ソウサが、アルバム『ホテル・ソウサ』で日本デビューすることになった。エレクトロやハウスのプロジェクトで歌う匿名ヴォーカリストとしてキャリアを積んだ後に、ジャズに転向したシンガーだ。
「子供の頃からジャズは聴いていた。でも、歌に関しては独学。テクニックよりも感情とか、歌詞の解釈、親密感に満ちた雰囲気を大切にしたいから」
アルバムは、LAで制作された。9曲のオリジナル楽曲もパメラ・オーランドやダニー・トーマスなど経験豊富なLAのソングライターと共作している。
「歌詞は15歳頃から書いていて、メロディ以上に歌詞へのこだわりが強い。スタンダードを自分なりの解釈で歌うのも好きだけれど、今回の作品では自作曲を通して私の人間性とか、生き方とかを知ってもらいたいと思ったので、LAでパメラらと共作したの。自分の経験を基に書いた曲もあるけれど、男性目線で書いた《ナイト・デモン》などはフィクション。誰かが私に乗り移って書かせたのでは? と自分でも思うくらい不思議な体験から生まれた曲よ」
どの曲にも物語がある。アルバムは、それらを集めた短編集のような構成になっており、『ホテル・ソウサ』というタイトルもそこから生まれた。
「ホテルの部屋って物語が生まれる場所でしょ。ドアを開けると、内部でいろいろなことが起きている。私のアルバムにもたくさんの物語が詰まっているから、それを喩える言葉を探している時にホテルってピッタリなんじゃないかとひらめいたのよ」
オリジナル以外にカヴァーが3曲。《マイ・フーリッシュ・ハート》《ジンジ》《悲しいうわさ》だ。
「《悲しいうわさ》は、歌詞がミステリアスで、何度歌っても裏に隠された意味を発見できずにいる。そこに強烈に惹きつけられているの。ボサノヴァは大好き。スタンダードと同様に良い時代に生まれた、質が高くて、良い時間を共有させてくれる音楽だと思うわ」
今の時代よりも20世紀のクラシカルな音楽に心惹かれるという。ストリングスを贅沢に使った理由も古き良き時代へのオマージュの気持ちからだ。
「オールドファッションへの憧れは、私の生き方でもあるの。この作品では古き良き時代をリスナーと共有したいと思い、1920年代をイメージして作った。それを感じてもらえたら、とてもうれしいわ」