インタビュー

LONG REVIEW——GOATBED 『「」ying & yang』



禁欲的なグルーヴと抑制の効いたトーン



GOATBED



2012年のミニ・アルバム『HELLBLAU』は、80sマナーのエレポップを身上としてきたGOATBEDがテクノやハウスの骨格を採り入れ、ミニマルな歌ものダンス・ミュージックへと変貌を遂げた作品だった。あれから1年を経て到着した本作は、そんな前作のアプローチを受け継ぎながら、より過激に推し進めたアルバムと言えるだろう。ここではクリック・ハウスやテック・ハウス、ベーシック・チャンネルのようなミニマル・ダブを引き合いに出せる細密で美しく整理されたサウンドスケープが展開されており、前作以上に禁欲的なグルーヴ感と抑制の効いたトーンが際立っているのだ。もはやトラックの質感は現行のテクノ~エレクトロニック・ミュージックそのものと形容できるし、Disc-1を歌もの中心に構成しつつ、Disc-2にはそのインスト(だけではなく、Disc-1のインスト曲はヴォーカル・ヴァージョンで収めているのがまたおもしろい)を収録しているのだから、当人もそうした捉え方を多分に意識しているのだろう。

とは言え、GOATBEDをGOATBEDたらしめてきたニューウェイヴィーなセンスとグラマラスな歌心は本作でもやはり健在だし、そのことがアルバムに心地良い体温とポップな肌触りを与えている。とりわけ、ニュー・オーダーばりの美メロを聴かせる“COSMOCALL FIELD”と、先行シングルとなったバレアリックなエレクトロ・ハウス“DREAMON DREAMER”は幅広い層の聴き手に受け入れられそうなキャッチーなナンバーだ。個人的にもっともグッときたのは、ノーマル“Warm Leatherette”のカヴァー。エレポップの古典中の古典をクールでモダンな音像にアップデートしてみせたこの曲は、現在のGOATBEDのスタンスを象徴しているように思う。


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掲載: 2013年08月21日 18:01

更新: 2013年08月21日 18:01

文/澤田大輔