ワーヘリ(外囿祥一郎&次田心平)
©尾崎正茂/ユニバーサルミュージック
噂の新ユニットがついに本格活動を開始!
吹奏楽や金管バンドで重用されるユーフォニアムと、オーケストラで低音の要を成すチューバ。大きさこそ違えど、見た目も音色も結構近いこの2つの金管楽器による、世界遺産(ワールド・ヘリテージ)並みに貴重なユニットがCDデビュー。それぞれのトップ奏者二人によって奏でる音楽もまた〈ワーヘリ〉級。
「3年程前から一緒に演奏しています。過去にはお互いにソロを吹き合っただけのステージもありましたが、今年3月の兵庫県立芸術文化センターのコンサートで手応えを感じて、結成を決めました」(外囿/euph)
「やっぱり二人で演奏するための曲が欲しかった。よく似た楽器なので役割の切り替えが難しいけれど、そこがまた一緒にやって楽しいところです」(次田/tub)
ほぼ全編が、ゲストにピアノを交えての録音。人気コンポーザー・ピアニストの加羽沢美濃のように、作・編曲者本人を贅沢に起用した楽曲は特に聴き所だ。
「加羽沢さんにとってもこんな編成は初めてとのことでしたが、本当にレコーディング中のギリギリまで手を加えていただいて、自身のオリジナルとはまた違った魅力を持つ楽曲に仕上げていただきました」(外囿)
気鋭の金井信は2曲のオリジナルの他、アンドレ・ギャニオンの名曲《めぐり逢い》や、カッチーニとピアソラの《アヴェ・マリア》のアレンジを担当。
「金井さんとは今回が初対面でしたが、楽曲が素直にすっと入ってきて、とても演奏しやすかった」(次田)
「ピアノだけで歌う《めぐり逢い》も素晴らしいですが、音符がどんどん前に進んでいくかんじの管楽器による演奏にもきっと心を掴まれるはずです」(外囿)
一方、天野正道作曲の《ジャズイディオムによる2章》では、ピアノ演奏で当ユニットの名付け親でもある日本ジャズ界の重鎮、前田憲男が参加し、二人の技巧的なプレイをきっちりサポート。加えてタイトル曲であるチャップリン作の《スマイル》とホレス・シルヴァー作の《ザ・プリーチャー》のアレンジ&ピアノも担当し、巨匠らしい演奏で聴く者を唸らせる。
「天野さんの曲では楽器を持ち替えて、チューバは完全にベースラインに徹しています。アドリブは得意ではないけどジャズも大好きですよ」(次田)
ちょっと不思議なネーミングの《アロハ・オエ・ディエス・イレ》はアルバム中唯一のデュオ曲。
「昨年オーストリアのリンツで行われたITEC(国際テューバ・ユーフォニアム・カンファレンス)に二人共ゲスト出演が決まって、中橋愛生さんに書いてもらった曲。名前はただの語呂あわせらしいです(笑)」(外囿)
どっしりと構えた男性的な響きにほっとさせられつつ、このコンビの無限の可能性を感じさせる1枚だ。
LIVE INFORMATION
『ワ―ヘリ・リサイタル2013』
○12/22(日)14:00開演 岡山・就実なでしこホール(就実高校内)
ピアノ:金井信
○25(水)19:00開演 東京・東京文化会館小ホール
ピアノ:前田憲男、加羽沢美濃、金井信