インタビュー

説明しすぎない一行の強さ──ハルカの言葉の背景にあるもの



昨年11月の初EP『虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。』と、今年3月に発表した2枚目のEP『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』──ハルカトミユキの過去作には短歌形式の表題が冠されているが、社会に対する宣戦布告となった前者、より内省的な毒をしたためた後者の特性をまさに示しているものだ。

「短歌は普段から詠みますね。散文で歌詞とか詩を書いてるときは自由に書けちゃうぶん正解がわからなかったりするんですけど、短歌だと決まってる文字数に収めなきゃいけないから、より言葉の強さが際立つんです。一行でパッて詠んだとき、31文字なんですけど、それ以上の何かが伝わってくるようなおもしろさがあって。短歌はその説明しすぎない一行の強さが好きで、それを歌詞にも入れたいっていうところがありますね」(ハルカ)。

例えば、今回の『シアノタイプ』の冒頭曲“消しゴム”は〈一番嫌いだったものに/もうすぐなりそうな気がしている〉というギョッとする一節で始まるが、その実、この歌が描いているのは2人の代表曲“Vanilla”同様に〈納得する言葉を書けないことに対する苦しみ〉。だが、そんなパーソナルな背景から誰にもあてはまる孤独感や歪な現代社会を想像させる〈余白〉と〈一行の強さ〉が、ハルカの言葉にはシーンに登場時から備わっている。声高でなくとも歌がきっちり届く理由は、ここにもあるのだろう。



▼ハルカトミユキの作品。
左から、2012年のEP『虚言者が夜明けを告げる。僕たちが、いつまでも黙っていると思うな。』、2013年のEP『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』(共にH+M)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年11月25日 19:40

更新: 2013年11月25日 19:40

ソース: bounce 360号(2013年10月25日発行)

文/土田真弓

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