インタビュー

ハルカトミユキに通じる新世代の反逆ポップ



SEBASTIAN X 『POWER OF NOISE』 we are(2013)

いまでこそまるでミュージカルのような、華やかでポップな楽曲を鳴らしているが、結成当初はもっとパンク寄りの音楽性を持ち味としており、アナーキズムはいまもバンドの重要なバックボーンとなっている。永原真夏は詩集「三千世界の兎たちへ」を発表するなど、ハルカと同様〈言葉の人〉でもある。*金子

 

Charisma.com 『アイ アイ シンドローム』 ラストラム(2013)

〈あなたのイライラは今、歌となる。〉という公式バイオのキャッチがまさに!な、現役OLのMC&DJ。スキルフルなラップで畳み掛けられる社会/個人への怒りや不満を込めたリリックはとことん容赦なく、かつ、どこか引いた視点がハルカトミユキに通じる。但し、Charisma.comの攻撃対象は同族嫌悪の感も含めて女性であることが多い。*土田

 

印象派 『Nietzsche』 eninal/SPACE SHOWER NETWORKS(2013)

こちらも現役OLによる2人組。ニューウェイヴィーなディスコ・パンクからトランス・ロックまでをクールに鳴らすが、そのダンサブルなサウンドのなかで広がるmiuの詞世界は、空耳すら計算に入れているような気もするほど散文的で暗喩的。埋め込まれた意味を紐解くと、隠された毒がじわりと滲み出てくる。深読み派にぜひ。*土田

 

きのこ帝国 『eureka』 DAIZAWA/UKプロジェクト(2013)

楽曲に潜む怒りの強度と言葉の鋭利さという2点に着目して現在の若手女性ヴォーカル&ギターを見回したとき、ハルカと佐藤は突出した存在である。キーボードとギターという差はあれど、エフェクトを多用したカラフルなサウンドメイキングに関しても、両ユニットは通じる部分があると言えるだろう。*金子

 

大森靖子 『魔法が使えないなら死にたい』 PINK(2013)

かつて、ハルカは詩作について〈吐き出すための詩〉と語ったが、この激情型シンガー・ソングライターにも同様の印象を受ける。〈わかってほしい〉という心情も通底するが、時代の風潮を口にすることがそのまま批評性へ直結している点も相似。大森曲なら〈風営法〉〈放射能〉などと唱える“音楽を捨てよ、そして音楽へ”あたりがその例かと。*土田

 

suzumoku 『キュビズム』 apart.(2013)

同調圧力をはじめ、どうしても気になってしまう社会の危うさや違和感のひとつひとつと真摯に向き合い、そのなかで生きる同世代を鼓舞しようとする、繊細な心を持った歌うたい。フォークを基調とした音楽性はもちろん、どこか生真面目さを感じさせるあたりが、両者のいちばん似ているところなのかもしれない。*金子

 

高橋優 『BREAK MY SILENCE』 unBORDE(2013)

盗撮や幼児虐待をモチーフに人間の本性を暴いた“こどものうた”収録の『僕らの平成ロックンロール』(2009年)以降、支持層を格段に広げつつも変わらぬ気焔を吐き続けるシンガー・ソングライター。その歌が帯びる熱はハルカトミユキとは対称的だが、〈言わずにはおけない性分〉は両者で共通。*土田

 

うみのて 『IN RAINBOW TOKYO』 DECKREC(2013)

サイケデリックなバンド・サウンドと、美メロと絶叫を交互に繰り返すヴォーカルによって、現代社会の病巣をSFチックに描き出す、テン年代型のフォーク・ロック。『シアノタイプ』収録の“振り出しに戻る”と、本作収録の“ぐるぐる回る”は、共にどこにも辿り着けない現代人への哀歌か。*金子

 

amazarashi 『ねえママ あなたの言うとおり』 ソニー(2013)

聴き手を挑発するかの如く暴力的な言葉の一方、メロディーは親しみやすく、大衆性も十分。そして何より、情熱を内に秘め、静かに燃え上がっている感じが、この2組はよく似ている。アレンジもそれぞれ多彩だが、ピアノを主とした曲で、その凛とした佇まいの類似がもっとも如実に浮かび上がる。*金子

 

踊ってばかりの国 『FLOWER』 mini muff(2012)

セシウムが燃えたときの空の色と、そのセシウムを吸収するという向日葵──ジャケットからして示唆的な最新作は、フラワー・ムーヴメントが根底にあったという。事なかれ主義であることにすら気付けないマスに向けて〈戦争が終わったことを知らせて欲しい〉と歌う“話はない”は、メロディーが大らかであるほどにシニシズムを増す。*土田

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年11月25日 19:40

更新: 2013年11月25日 19:40

ソース: bounce 360号(2013年10月25日発行)

ディスクガイド/金子厚武、土田真弓