インタビュー

平賀さち枝 『ギフト/いつもふたりで』



平賀さち枝_A

ファースト・アルバム『さっちゃん』、ミニ・アルバム『23歳』の2作をリリースし、新たな才能の登場を鮮やかに印象付けた平賀さち枝。カントリーやソウル・ミュージックなどのテイストを極めて自然に反映させながら、誰もが楽しめる軽やかなポップスを仕立てるソングライティング・センス、そして素朴な耳触りと凛とした佇まいが共存する歌声で、若手の女性シンガー・ソングライターのなかにあって、めきめきと知名度を上げてきた。『23歳』のリリース後は、「なかなか音楽に夢中になれなくて、遊んでばかり。だいぶサボってましたね(笑)」という時期を経験したという彼女だが、今年の春に開催された全国ツアー〈平賀さち枝 春まねきワンマンツアー〉をきっかけに少しずつ調子を上げ、初夏から本格的に曲作りを再開。約1年半ぶりのリリースとなる両A面シングル『ギフト/いつもふたりで』(全4曲収録)からも、さまざまな試行錯誤を経て、新たなステージへ進みはじめた平賀の前向きなモードがしっかりと伝わってくる。特に耳に残るのは、軽快なリズムと色鮮やかなメロディー、〈確かな夜にいつか会いに行く/その時きっと待っててね〉という歌詞がひとつになった“ギフト”。「自分自身が元気になれるような曲を作りたかった」というこちらのナンバーは、ポップスメイカーとしての彼女の才能をさらに多くのリスナーへ知らしめることとなるだろう。

「ツアーが終わってしばらく経った頃、お酒のことで周りの人たちに迷惑をかけちゃったことがあって。すごい自己嫌悪だったし、人生の終わりみたいに落ち込んじゃったんですけど、〈きっとみんなも忘れてくれるはず。まずは元気を出さなくちゃ〉と思って書いたのが、“ギフト”なんです。〈暗がって明けてゆく日々も/遠くで思うとき優しくなれたらな〉という歌詞も、まさにそういう気持ちですね。こんなにひどい経験も、いつかは遠くに感じられるはず。そうすれば自分も、もっと優しくなれるんじゃないかって」。

一方“いつもふたりで”は、穏やかな旋律がゆったりと広がるミディアム。春の情景のなかで、恋人たちがお互いを思い合う様子を映し出したこの曲は、これまでの自身の作風をさらに深めたナンバーと言えそうだ。

「ラヴソングは書きやすいんですよね、やっぱり。この曲は春先あたりに出来たんですけど、特に1番に関しては自分でもどうやって歌詞を書いたか覚えてないくらい、すごく自然に出てきたんです」。

これら2曲のレコーディングには、oono yuuki(ギター)、シャンソンシゲル(ドラムス)、はこモーフや王舟などで活動する池上加奈恵(ベース)、ザ・なつやすみバンド/うつくしきひかりの中川理沙(キーボード)が参加。この人選には「普段から繋がりのある友達といっしょに録ってみたい」という意志が反映されているという。

「前回(『23歳』)は年上の方々といっしょにやらせてもらったから、今回はもう少し年齢の近い人とやってみたいなって。基本的には自由にやってもらったんですけど、あまりにも私が何も言わないから、みんな困ってましたね〜。抽象的なことというか、例えば“ギフト”だったら、〈明るくて元気に〉みたいなことしか言えないので(笑)。でも、本当に明るくて元気な曲になったから、良かったです」。

秋から年末にかけてライヴの本数も増やすなど、少しずつ活動のペースを上げている平賀さち枝。次のアルバムに向けた曲作りも、前向きな姿勢で臨んでいるようだ。

「今回のシングルの延長線上にある曲を作ろうと思っています。もともと私は覚えやすいメロディーが好きだし、みんなが聴きやすくて、明るいアルバムになったらいいなって。〈暗くて切ない〉みたいなものより、パッと明るいほうがいいじゃないですか」。



PROFILE/平賀さち枝


87年、岩手生まれのシンガー・ソングライター。2009年に作詞/作曲、ギターを始め、その後都内を中心にライヴ活動を開始。2011年にファースト・アルバム『さっちゃん』をリリースして注目を集め、翌2012年4月にミニ・アルバム『23歳』を、5月にタワーレコード新宿店限定シングル“No Music, No Life”を立て続けに発表。数多くのイヴェントに出演するほか、SEBASTIAN Xなどロック・バンドのライヴでゲストに招かれて認知を広める。今年に入り、春に全国各地を回るワンマン・ツアーを敢行。また、やけのはらの最新アルバム『SUNNY NEW LIFE』にヴォーカルで参加したことも話題に。11月13日にニュー・シングル『ギフト/いつもふたりで』(kiti)をリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年11月13日 16:30

更新: 2013年11月13日 16:30

ソース: bounce 360号(2013年10月25日発行)

インタヴュー・文/森 朋之