ダニーのD、デトロイトのD——DDな諸兄姉に贈るデトロイト・ディスク!
HOUSE SHOES 『Let It Go』 Tres(2012)
ディラをフックアップしたことだけは有名なヴェテランがトレから出した正規アルバム。ゲストリストにはブラック・ミルクやギルティ・シンプソン、クエル・クリス、マーヴワンら地元勢に、アルケミストやチャリ・ツナまでの名が並ぶ。ダニー参加の“Sweet”も霞むほどの豪華さで、兄貴分ならではの仕上がりだ。
J. DILLA 『Rebirth Of Detroit』 Ruff Draft(2012)
ニック・スピードが適宜アレンジを整えながらデトロイトMCたちを迎えて仕上げたディラの未発表トラック集。ダニーの“Jay Dee's Revenge”はもちろん、ギルティ・シンプソンやクエル・クリス、ボールディ・ジェイムズ、イラJらイキの良い連中が揃った内容はまさに有望株のショウケースの如し。
EMINEM 『The Marshall Mathers LP2』 Interscope(2013)
何かいろいろタイミングが合いすぎなきもするけど……もちろんデトロイトを代表するラッパーといえばエミネム。ふたたび生家をジャケにあしらったあの大ブレイク作の続編ということで、嫌でも身体に染み付いた離れられない呪いとしての故郷が歌い込まれている。ロイスの参加が今回ナシなのは残念。
BLACK MILK & DANNY BROWN 『Black And Brown!』 Fat Beats(2011)
ブラック・ミルクの『Album Of The Year』にダニーが招かれたことで始まったコラボがアルバム1枚に結実。ゲストを挟まずに魁偉なマイク捌きをひたすら聴かせるために作られたような内容で、バタつくドラムスの足取りもいつも以上にラフ&タフな雰囲気だ。こんなズルムケのダニーもまた聴きたい。
QUELLE CHRIS 『Ghost At The Finish Line』 Mello Music(2013)
2008年の『Hot Soup』から『XXX』に至るまでダニーのアルバム作品にはほぼ欠かさず参加し、自身の前作にはダニーも招いていたりするクエル・クリス。メロ・ミュージック移籍作となる今回は、ブラック・ミルクを迎えた“Coke Rap War Game”を中心にマーヴ・ワンやハウス・シューズも登場する安心のDマナー。
CLEAR SOUL FORCES 『Gold PP7s』 Fat Beats(2013)
ロイス・ダ・5'9"の薦めでグループ活動を始めたというアップカマーの初めてのCDアルバム。ディラ覚醒後のディラではなく、ジェイ・ディーっぽい硬質なビートを削り出すイラジデの手捌きはどこかロウレス・エレメントのマグニフを思い出させたりもする。ちょっとニュー・スクールな感じもあるのが新世代。
YANCEY BOYS 『Sunset Blvd.』 Delicious Vinyl(2013)
しかし、ディラのビートってまだどれほどあるのだろう? 本作は遺兄の秘蔵ビートに乗せて、かつてのソロ作では歌中心だったイラJがラップを披露したアルバム。フランク・ニット(フランク&ダンク)いわく兄弟がヤンシー・ボーイズで、自身はサポートという位置付けらしいが、的確な采配ぶりはあきらかだろう。
BOLDY JAMES 『My 1st Chemistry Set』 Decon(2013)
従弟のチャック・イングリッシュ(クール・キッズ)絡みの露出が多いのであまり意識させられる局面はないが、彼もデトロイト男。いきなりアルケミストとのタッグ作で登場するあたり実力は確かで、その語り口にはNYっぽいビターなリリシズムも滲む。別掲のアルケミスト盤ではダニーとのニアミスもあった。
BIG SEAN 『Hall Of Fame: Deluxe Edirion』 G.O.O.D./Def Jam(2013)
いまやエミネムと並ぶDメジャーの雄ながら、ダニーいわく〈荒廃したデトロイトをクールなもののように言いふらすのが許せん〉とのこと。いろいろデリケートな気もするけど、この大ヒット作のデラックス・エディションにはミックステープ時代からの盟友アーリー・マックも引き続きフィーチャーしている。
14KT 『Nickel & Dimed』 Mello Music(2013)
メイヤー・ホーソーンらとのラップ・グループ=アスレチック・マイク・リーグを経てソロではインスト主体の自作でビート・シーンにも支持を広げている飴色の14カラット。ダニブラの『The Hybrid』に参加した過去もあり、今作のボーナス部分では黒乳やブルー、JMSN、コケインらのラッパーと盛り上げてくれる。
SLUM VILLAGE 『Evolution』 Ne'Astra(2013)
老舗グループの最新作。後見人のRJ・ライスとの確執を明かしてエルザイが離脱し、さらにその息子ヤングRJが加入したことで……どこか地元の繋がりが薄くなってしまった感もあるか。ただ、T3とRJ、イラJを擁する新トリオのキックオフとしては、気合いの入ったRJビーツもカッコイイし余裕で及第点以上なのは当然。
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