INTERVIEW(4)――何が来ても腑に落ちる間口の広さ
何が来ても腑に落ちる間口の広さ
――では最後に。このトリビュートをきっかけにhideさんを知る若いリスナーや、逆にhideさんから入ってTHE CHERRY COKE$とTHE NOVEMBERSを知るリスナーもいると思うので、その人たちへ向けてメッセージをお願いします。
MOCCHI「僕もいちファンから始まっているので、これを通して、楽器を持ったりしてもらいたいですよね。こういうトリビュート盤とか昔の音源とかを聴いて、映像を観て、hideさんがどれだけ偉大な方だったのかを若い人たちにも知ってもらって、それを音楽でやっていただけたらなって、僕が言うことでもないですけど思いますね」
HIROMITSU「今日対談させてもらって思ったんですけど、hideさんにはいろんな要素があって、僕たちもTHE NOVEMBERSさんもたぶん違った角度から入っていってるんで、それが今回のトリビュートの音楽性にも出ているのかもしれない。みんなそれぞれのやり方でそれぞれの色になってると思うし、ぜひ楽しんで聴いてほしいですね。僕らみたいにいろんな楽器が入ってるヘンなバンドも、〈なんだこれ? でも楽しいな〉と思ってくれれば嬉しいです。〈D.O.D.〉には僕らのお酒に対する思いが詰まってるんですよ。いまだにツアーで、打ち上げのあとにホテルの部屋まで辿り着けないことがあるので。ロビーで寝てたりとか(笑)」
MOCCHI「あるね~(笑)」
HIROMITSU「やっちゃいけないことだと思うんですけど(笑)。朝8時まで飲んで、移動して、二日酔いのままリハやって、でも本番までお風呂入って酒抜いて、ライヴやって、打ち上げやってまた飲むというバンドマンのサイクルがあって、オレが〈D.O.D.〉が好きなのもそういう理由ですね。hideさんのインタヴューを読むと、7~8軒はしごして朝まで飲んで、出勤してくるサラリーマンを蹴散らしてまだやってる店を探すみたいな(笑)。僕の育った環境もそうで、バンドにはそういう文化があったというか、〈気合い見せろ!〉というところがあったので。そこに惹かれてやってきたので、〈D.O.D.〉が大好きなんですよ」
高松「いろんな音楽性の方たちが、それぞれにhideさんの曲の解釈をして、ここに集まっていると思うので。いろんな発見があるといいなと思います。そして、何かのきっかけになってくれれば嬉しいです」
小林「これまでトリビュートに参加したメンツと、今回参加したメンツを見ていると、一見意外な人たちが集まっているような気がするんですけど、次の瞬間には全部腑に落ちる感じが個人的にはあります。それはきっと、何が来ても驚かないような間口の広さがhideさんにはあったんだなというふうに、トリビュートの歴史を見ていて思うんですね。それはhideさんが〈自分らしくある〉ということを体現した人だから、自分らしくあることを生業にしているいろんな音楽性の人がこうやって集うのかな?と。これを聴いて、何かを表現する人もしない人も、〈自分らしくあること〉から豊かさを見い出すという、hideさんのそういうところが伝わったらいいなと思います」
PROFILE/THE CHERRY COKE$
ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムスに加えてアコーディオンやティン・ホイッスル、マンドリン、バンジョー、サックス、トランペットなど多くの楽器を操り、底抜けの陽気さと染み入るような哀愁を体現する7人編成のアイリッシュ・パンク・バンド。ハード・ロック~ヘヴィー・メタル愛を明快に提示した前作『BLACK REVENGE』の重さと速さを継承しつつも、最新作『COLOURS』ではリズムがより多様化。男性メンバーの野太い咆哮と可憐な女性ヴォーカルが入り混じるメロディーもキャッチーで、聴き手に向かって大きく開かれた仕上がりとなっている。そんな本作を携えて回ってきた全国ツアーのファイナルとなる東京・赤坂BLITZ公演を12月23日に控えている。
「『COLOURS』はアイリッシュ・パンクに収まらないようなアルバムで、いまはそのツアー中なんですけど、〈海賊〉的なバンド初期のコンセプトに戻ってて。海賊の飲んだくれ集団が繰り広げるショウ的なものを赤坂BLITZでもやれたらいいなと思っています」(HIROMITSU)。
「赤坂BLITZが波止場というか、帰ってきた場所という感じで大宴会をやっていこうかなと」(MOCCHI)。
「音楽以外にもいままでやってなかったことをやれたらなと思っているので、ぜひ遊びにきてほしいですね」(HIROMITSU)。
PROFILE/THE NOVEMBERS
自主レーベル・MERZを立ち上げての第1弾として、11月30日にニュー・アルバム『zeitgeist』をリリースしたばかりの4人組バンド。青木ロビン(downy)をプロデューサーに迎えた今作は、明と暗に振り切った直近の2作品『GIFT』『Fourth wall』の総括とも言える内容。さまざまな選択を促すシリアスな詞世界の果てにそこはかとない希望を、ポスト・パンク~ニューウェイヴ経由、さらにはウィッチ・ハウスやインダストリアルをも取り込んだダークかつメランコリックなサウンドに、たおやかなポップネスを忍ばせている。
「タイトルの『zeitgeist』は〈時代精神〉っていうドイツ語の造語で、いま目の前にあるあらゆることに対して改めて自覚的になってみると、いろんな発見があるんじゃないかなっていう。そういった僕たちなりの提案とか問いかけとか、何かを選んだり選ばなかったりっていう〈選別〉をテーマに作った作品ですね。音楽を中心にしていろいろ社会と関わっていって、もうちょっと楽しいことができたらいいなと思ってます。サウンド面は、今回は音楽的なもの以外からの影響が多かったですね。ディストピア小説とか映画とか。例えば、僕は押井守監督の映画『スカイ・クロラ』の音楽を担当している川井憲次さんの音楽がすごく好きで、彼が『鉄男』(リメイク版ではナイン・インチ・ネイルズが音楽を手掛けた)とかのインダストリアル系の音楽を作ったらどうなるんだろう?というコンセプトから始まった曲や……あとは僕、『爆裂都市 BURST CITY』も大好きで。そういうちょっと、〈鉄槌〉みたいなイメージで作ってたところもありますね(笑)」(小林)。
※『zeitgeist』はタワーレコード渋谷店、新宿店にて取扱い中。その他の入手方法はオフィシャルサイトにてご確認ください。