インタビュー

Ludovico Einaudi



ヨーロッパで話題のイタリアン・コンポーザーに聞く

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イタリアのコンポーザー・ピアニストであるルドヴィコ・エイナウディの名前を知らない人も多いかもしれない。しかし大ヒットしたフランス映画『最強のふたり』の音楽を担当した人と言えば、あの映画の様々な場面を彩っていた美しく、煌めくような音楽を思い出してくれるだろう。

「イタリアの映画監督とも数多く共同作業をしています。その映画の音楽を担当するかどうかは、映画の題材、監督の個性などをじっくり考えて決めます」

知的な雰囲気のエイナウディ。その作曲スタイルも、シンプルな要素を積み重ねて、それを複雑に展開して行くという、独特のスタイルを取っている。

「基本的には、朝起きたらピアノの前に座り、仕事を続けるというのが私のスタイルですね。ふとつのフレーズを思いついたら、それを何度も弾いてみる。そうすると、また別のフレーズが浮かんで来る。それをつなぎ合わせて行くと、さらにまた別のフレーズが浮かんで来るので、それをひとつの作品にまとめて行く。そんな感じで作曲が進みます。さらに編曲をしている段階でも、新たなインスピレーションが湧いたら、それを加える。そんな風にして作品が出来上がります」

時にミニマル音楽的と言われるエイナウディの作風だけれど、そこに留まらない奥深さを感じさせるのは、そうした長い作曲/編曲の過程に秘密がありそうだ。

由緒ある家系に生まれ、音楽家を志した。イタリア現代音楽の巨匠ルチアーノ・ベリオに師事したこともある。ベリオの教えとは?

「ともかく広く社会に関心を持ちなさい、というのがベリオの教えてくれたことです。音楽だけではなく、現代のアートすべて、そして社会、政治などにも常に関心を持っていることが大事だと。作曲技法などよりも、彼のそのサジェスチョンのほうが、私にとってはとても大事な教えとなりました。だからと言って、ノーノのように政治的活動に参加する訳ではない。音楽家はあくまで音楽を通して社会に参加するのです」

さて、今回リリースされた新アルバム『時の移ろいの中で』は、気鋭のヴァイオリニスト、ダニエル・ホープが参加していること話題となっている。

「ダニエルがまず私の作品を彼のアルバムに使ってくれた。それで付き合いが始まり、私の新しいアルバムに参加する気持ちがあるかどうか、彼に尋ねたところ、もちろん、と返事が来たのです」

 エイナウディの名前を知らなくても良い。このアルバムに耳を傾け、その音楽の世界に身体ごとひたってみて欲しい。そこには新しい体験が待っているはずだ。



カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年12月25日 10:00

ソース: intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)

interview&text:片桐卓也