インタビュー

ARIANA GRANDE 『Yours Truly』



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「きゃりーぱみゅぱみゅとお友達になりたいの」「日本に行ったら猫カフェに行きたいわ」という発言からは、次なるケイティ・ペリーあたりのポジションを狙うポップスターかと見紛われそうだが、これがとんでもなく実力派のアリアナ・グランデ。ルックスは見ての通り、とびきりチャーミングでキラキラのお姫様系——なので、もちろん完全アイドルとしても成立しそうな20歳なのだが、とにかく歌の上手さがハンパない。しばしば使われるマライア・キャリーの後継者としてのキャッチ〈ネクスト・マライア〉ほど彼女を上手く言い当てたフレーズもないだろう。90年代の第1期マライア——清楚なイメージで、フルボディーのセクシー系へと変貌する以前のマライア姫のイメージを、アリアナは彷佛とさせている。

「影響を受けたのはホイットニー・ヒューストン、クリスティーナ・アギレラ、セリーヌ・ディオン、アレサ・フランクリン、エタ・ジェイムズ、スティーヴィー・ワンダー……ソウルフルでパワフルなヴォーカリストが好きなの。マライアは時を超えた存在よね。世界でもっとも優れたシンガーだわ。彼女と比較されるのは最高の賛辞よ」。

パワフルな実力派シンガーたちからたっぷり影響を受けてきたアリアナ。90年代生まれの彼女にとって、幼少の頃から耳にしてきた90年代のR&Bサウンドというのが肌に染み込み、もっとも自然に歌える音楽なのだという。というわけで、90年代R&Bサウンドの権化とも呼ぶべきベイビーフェイス(ホイットニー、マライア、マドンナ)がファースト・アルバム『Yours Truly』に関わったのは、ごく自然な流れだったのかもしれない。とはいえ、新人のプロデュースを御大みずから手掛けるとは、やはりアリアナの実力、将来性を見込んでに違いない。

「ベイビーフェイスはキングだもの。彼は自身の得意なことを把握している。素晴らしい人だわ。私がデビュー作でやりたかったことをすべて形にしてくれた」。

ベイビーフェイスの他にも彼の弟子にあたるラスカルズの2人、ハーモニー・サミュエル(クリス・ブラウン、ニーヨ)らが中心になって制作を指揮。往年のモータウンを彷佛とさせる懐かしいスタイルや、ミーカとの共演によるポップソング、エレクトロなどにも寄り道しつつ、だがカチッと統一感のある仕上がりになっている。彼女自身も全曲のソングライティングに関わり、エグゼクティヴ・プロデューサーの大役を務め、ただならぬ新人ぶりを発揮しまくっている。

全米TOP10入りした先行シングル“The Way”ではラッパーのマック・ミラーと共演。マライア&ジャーメイン・デュプリを思い出させるサウンドが懐かしくも新鮮で、何よりも意気揚々と生命感に溢れているのが素晴らしい。MVでは2人が熱いキスまで披露したものだから、あれこれ憶測も飛んだが「あれは演技よ」とキッパリ(何せニコロデオンの『ビクトリアス』出身の女優ですから)。だが、その騒動に懲りた彼女は、それ以降のビデオでキスを御法度に。実際に撮影後に付き合うことになった(ものの残念ながら先頃破局した)ウォンテッドのネイサン・サイクスとのデュエット曲“Almost Is Never Enough”でも、パトリック・シュワルツェネッガー(シュワちゃんの息子)が出演した“Right There”でもキスはお預けとなったが、アルバム『Yours Truly』にはさまざまな恋愛ソングをたっぷり収録されている。

「このアルバムをラヴレターのように感じているの。この3年間に起こった小さなストーリーを集めたから、どの曲も大切で愛おしく思っているわ。すごくパーソナル。ファンや世界に私の心のひとかけらを差し出しているように感じている。だからラヴレターのように〈Yours Truly(=かしこ)〉という言葉で結びたかったの」。

1月のショウケースに続いて2月には再来日も決定。すっかり日本の虜になった彼女が一体どこに出没するかはお楽しみ!



PROFILE/アリアナ・グランデ


フロリダはボカラトン出身の女優/シンガー・ソングライター。93年生まれ。2008年にブロードウェイ・ミュージカル「13」に出演。2010年よりニコロデオンのシットコム「ビクトリアス」でキャット・ヴァレンタイン役を演じ、一躍脚光を浴びる。同番組のサントラ・シリーズにてシンガーとしてレコーディング・デビューし、2011年に“Put Your Hearts Up”で正式デビューを果たす。翌年にはミーカのシングル“Popular Song”に客演。2013年に入って、シングル“The Way”が全米9位の大ヒットを記録し、続くファースト・アルバム『Yours Truly』(Republic/ユニバーサル)は全米No.1を獲得する。配信のみのEP『Christmas Kisses』を挿み、このたびその日本盤がリリースされたばかり。

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掲載: 2014年02月05日 18:00

更新: 2014年02月05日 18:00

ソース: bounce 363号(2014年1月25日発行)

インタヴュー・文/村上ひさし