インタビュー

意欲を取り戻しつつある最近の童顔ワークスをおさらい



80年代後半から2000年代初頭にかけ、ポップ・フィールドにも跨がるプロデューサーとして別格的な威信を誇ったベイビーフェイスだったが、左頁にもあるような要因からか、本人の作家性が高まったからか、仕事相手もアーバンの先端から各界のオーセンティックなヴェテランへとシフトしていくことになる。そんな状況からの揺り戻しが始まったのは、LA ・リードの後押しも得て自身の新レーベル=ソーダポップからクリスティニア・デバージを送り出した2009年頃。“Goodbye”のポップ・ヒットも生んだ彼女の『Exposed』は後のアリアナ・グランデ仕事の雛形ともいえる力作だった。同年にはヴァネッサ・ウイリアムズやマリオ、チャーリー・ウィルソンの作品で腕を振るっている。

2011年にはアンソニー・ハミルトンの『Back To Love』で先行ヒット“Woo”など3曲をアントニオ・ディクソン(元アンダードッグズ)と共同プロデュースし、珍しく往年のサザン・ソウル作法にマッチするメロディアスな作風を披露していたが、その年のハイライトには(共作者が多すぎて関与度合いはわからないものの)ビヨンセの感動的な大曲“Best Thing I Never Had”を挙げるべきだろう。同曲を含む『4』の日本盤ボートラ“Dreaming”もフェイス仕事なので要注目だ。翌2012年にはアリシア・キーズ“That's When I Knew”をギター主体のアコースティックな手捌きでまとめている。そして2013年にはアリアナ・グランデの『Yours Truly』で5曲を担当。ここではディクソンに加えてラスカルズ(片割れは「ビクトリアス」で人気の俳優、レオン・トーマスだ!)とも組み、後進の若々しさも活用して“Baby I”などをキャッチーに仕上げてみせた。

一方、久々に手を組んでセリーヌ・ディオンを手掛けたウォルター・アファナシエフとは、共同でバーブラ・ストライサンドもプロデュースしている模様。さらにはアレサ・フランクリン、レオン・トーマスのソロ作など、大御所から若手まで振り幅の広い仕事をコンスタントに手掛けているフェイス。裏方としてももう一花咲かせてほしい。



▼関連盤を紹介。
左から、クリスティニア・デバージの2009年作『Exposed』(Sodapop/Island)、アンソニー・ハミルトンの2011年作『Back To Love』(RCA)、ビヨンセの2011年作『4』(Parkwood/Columbia)、アリシア・キーズの2012年作『Girl On Fire』(RCA)、アリアナ・グランデの2013年作『Yours Truly』(Republic/ユニバーサル)、セリーヌ・ディオンの2013年作『Loved Me Back To Life』(Columbia)

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2014年02月05日 17:59

更新: 2014年02月05日 17:59

ソース: bounce 363号(2014年1月25日発行)

文/出嶌孝次