インタビュー

LONG REVIEW――小林太郎 “IGNITE”



2013年を結晶化した新作から滲む〈悲しみ〉と〈決意〉





ブルージーに泣き狂うギター・ソロのイントロに続けて、獰猛なエンジン音のような爆音ギターと荒くれビートが一気に五感を支配する“IGNITE”。ヘヴィー・ロックの硬質な感触と焦燥まみれの疾走感が聴く者すべての身体と心をびりびりと震わせる“DIVE DEEP”。そして、LAメタルとハード・ロックが狂騒の果てへとデッドヒートを繰り広げるかのようにスリリングな“REVOLVE”……ロックの熱量と鋭利さを誰よりもヴィヴィッドに体現する精鋭・小林太郎の2枚目のEPとなる新作“IGNITE”には、昨年1月にリリースされたメジャーからのファースト・フル・アルバム『tremolo』以降の進化が高純度で結晶化されている。

例えば、燃え盛る衝動と共に4つ打ちビートの上で泣き踊るかの如き先行シングル曲“鼓動”の、狂おしいほどにエモーショナルな昂揚感。この曲のイントロで聴かせる、インダストリアルなギター・サウンドの手触りとハイブリッドなメイン・フレーズの鮮烈なコントラストや、あるいはインスト・ナンバー“SOL Y SOMBRA”でのダブステップにも通じるアレンジからは、それこそミューズあたりを彷彿とさせるスケール感と音楽的探究心が滲み出している。また、配信限定シングル“太陽”で〈愛したものを 一つも守れないで/生きていくその日々に 価値などないから〉と切々と歌い上げられる裸の思いは、時代に流されず、己を見失わず、一歩一歩前進する小林太郎・23歳の決意を熱く伝えてくる。身を焦がすほど熱烈なラヴソングの向こう側に〈いまを生きるうえで本当に大事なもの〉を描き出そうとする彼の魂が凝縮された、珠玉の全7曲。ラストを飾るステッペンウルフ“Born To Be Wild”の灼熱カバー・ヴァージョンも実に爽快だ。


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掲載: 2014年02月12日 18:01

更新: 2014年02月12日 18:01

文/高橋智樹