高橋優 『今、そこにある明滅と群生』
[ interview ]
音楽をはじめた頃の原点に帰り、裸の声をぶつけてきた前作『BREAK MY SILENCE』から一年弱。高橋優が、更に魂をむき出しにしたアルバム『今、そこにある明滅と群生』を完成させた。正面を向いて真っすぐに訴えかける全11曲に、聞いた人の心はどう反応するのか。リスナーのレスポンスも気になる今作について高橋が語った。
今作においての大きなテーマは、光を探すのではなく、 自分が照らせる闇を探すということなんです
―“太陽と花”の特典DVDに東北ライブハウス大作戦ツアー「一人旅」の映像が収録されていましたが、その中のインタビューで、「東北ライブハウス大作戦ツアーがミュージシャンとしてのターニングポイントになった」という話をしてましたよね。このツアーはアルバムにも影響を与えてるのかなと思ったんですが。
「影響ありましたね。自分の表現のすべてに影響を及ぼしました。曲自体は、その前から作ってたものも、その後から作ったものもあるんですけど、東北3カ所を廻らせてもらったあとからの制作は、自分のいろんな迷いが消えた感じがありましたね」
―東北のライブ後にアルバムで表現したいことが明確になった?
「はい。今作においての大きなテーマは、光を探すのではなく、自分が照らせる闇を探すということなんですね。今までは、<どこに行ったら光や希望があるんだろう?>って、外に光を求めて探すことばかりだったんです。でも、東北のライブをやらせてもらってからは、自分が今出来ることや自分の存在で、誰を照らしてあげられるか、誰に笑顔になってもらえるか、自分の力でどこまで人を楽しい気持ちに出来るかというところをおろそかにしちゃいけないと思うようになったんです。自分を光らせるのは、そう簡単にできることではないかもしれないけど、やってみる価値があると思いました」
―それでアルバムタイトルには<明滅>という言葉が入っているんですね。これは光が明滅するということですよね?
「はい。いくら自分を光らせたとしても、いつまでも光ってはいられないような気がしたんです。人って落ち込むこともありますから。人は、光ったり消えたりするけど、光ったときに誰かが照らされる。光ったときの笑顔を見た人が、<あの時の笑顔に救われました>、<あの笑顔、本当に素敵でした>って、その人と結婚しちゃったりするかもしれないじゃないですか。そうかと思えば、フッと疲れた顔をしてた時に、<高橋さん、今日はお疲れでしたね>って言われることもある(笑)。僕は、光ったり消えたり明滅してるんだなって。それを唄いたかった」
―なるほど。すでに“パイオニア”では、<光探すより自分が照らせる暗闇を見つけていたい>って唄っていましたし、最新シングル“太陽と花”でも<自らを焼いて光る>と唄ってます。“BE LIGHT”はタイトルそのものがアルバムのテーマのようですもんね。
「はい。どこかしらまだ行ったことのないところに光り輝く何かがあるのではなく、僕らはそもそも照らし合っていて、そこには愛も幸せも何もかも全部があるはずだと。それを見て見ぬフリしたり、見えているのに気付いてなかったりっていうところで、<今、そこにある>っていう言葉をタイトルに入れたかったんですよね。誰の人生においても、今、そこに明滅している人々、犬、猫、虫でもなんでも。いろんな生き物達がそこで息づいていて、誰かにとっての光になっていたり、誰かにとっての影になったりしてるんです。要は当たり前の景色っていうことを僕なりに比喩したのが今回のアルバムタイトル。収録曲、全部でそれを唄ってます」
―内容的には、ここまで言って良いのかっていうくらい、前作『BREAK MY SILENCE』以上に正直に世の中でおこっていることを唄っている曲ばかりですね。
「そうですね。今回は、自分の言いたいことや表現したいことのすべてを全部やり尽くしたアルバムになったと思います」
―歌詞から、メロディから、唄い方、演奏、アレンジ、すべてにおいて練られているのも伝わりますが。
「前作では即興とか、衝動的なものをバンドバージョンでレコーディングっていう、スピーディーな流れでやったんですけど、今回は部屋で一人で曲を書いて自分以外の人に聞かせる前の段階から練りに練ったんですよ。アレンジに関しても、すごくこだわって、バンドメンバーとスタッフと、みんなで模索しながら、ここに到着しています。労力は今まででナンバーワンなので、<できた!>っていう爽快感たるやハンパじゃないですよ。だから、聴いてもらえて、感想をもらえただけで嬉しいんです。ツアーでこの曲を聴いてくれた人たちの顔を見るのも今から本当に楽しみです」
■Album…『今、そこにある明滅と群生』 now on sale!!
■songlist…
01.BE RIGHT
02.太陽と花(TBS系 金曜ドラマ「アリスの棘」主題歌)
03.裸の王国
04.明日への星
05.WC
06.同じ日々の繰り返し
07.ヤキモチ
08.旅人(映画「東京難民」主題歌)
09.犬
10.パイオニア(日本テレビ系『フットンダ』3月エンディングテーマ)
11.おやすみ(WOWOW連続ドラマW「東野圭吾 変身」主題歌)
<初回限定盤DVD収録内容>
※スタジオライブ&独占インタビュー映像収録
01.BE RIGHT
02.太陽と花
03.ヤキモチ
04.明日への星
05.8月6日
記事内容:TOWER+ 2014/8/10号より掲載