インタビュー

水樹奈々『SMASHING ANTHEMS』

tower37-1midashi

通算11枚目のアルバム『SMASHING ANTHEMS』がついに完成。思えば2015年に発表したシングル曲もそれぞれに一癖二癖あり、水樹奈々という音楽の奥行きを垣間見せていたが、今作でそれは見事に極まった。多彩で、多様で、そしてとことん声にこだわった意欲作。ファンならずとも聴いておきたい1枚だ。

純粋に歌いたい曲を集めたら、アンセムがいっぱいになりました

前作『SUPERNAL LIBERTY』を発表したとき、彼女が言ったこと。

「この10枚目のアルバムが、私をより自由な未来へ連れて行ってくれる」

今作、11枚目にあたる『SMASHING ANTHEMS』で、その約束は確かに果たされた。これは驚くべき自由。聴けば思わずほくそ笑んでしまうほどの自由度の高さ。水樹奈々が世間の持つ水樹奈々たるイメージをみずから凌駕し、そして新たなステージへとその音楽を導いたのだ。

「前作を作って自由を獲得したぞ!と本気で思えたし、実際にそれは確かなことでした。でも私、まだまだ行けちゃう人みたいです(笑)。いつからか考えてから行動するのではなくて、行動してから考えるようになったんですよね。やらずに後悔するより、やってみてダメだったとしても色々学べた方がずっといいなって」

バラエティに富むとは、すなわちこういうことだと言わんばかりの収録曲。昭和の清純派アイドルがいたかと思えば、80年代ディスコのダサかっこいいビートが響いたり、はたまたセクシーで強気なポップスはさながらレディ・ガガか。水樹の真骨頂であるアグレッシブなロックナンバーでさえ、通好みのアレンジで実に味わい深い仕上がりとなっている。

「本当に同じアルバムに入ってるの!?と思われてしまいそうなラインナップですよね。でも、全部が水樹です。歌謡曲のメロディへのこだわりだったり、今まで積み上げてきた本質は決してブレていないと自負しています。そこへきて、きっとまた新しい扉がパカーンと開いちゃったんだと思います(笑)」



mizuki1



扉が開いた決して小さくはない一因は、今年1月にはじめて行ったアコースティックライヴ<LIVE THEATER 2015>の成功だった。そもそも彼女は、度胸を量れば右に出るものはいないくらい思いきりのいい人で、その本領を惜しみなく発揮したのがかのステージ。どんな音楽ジャンルでも、どんなアプローチでも、水樹奈々という歌声がそこにあれば必ず世界観はひとつになる。

「<LIVE THEATER>の経験が、今年の制作活動やライブのすべてに影響していると言っても過言ではないと思います。これまではチャンネル数をたくさん使った音の詰まった曲たちが主流だったのですが、今年はより声にスポットを当てられる曲を自然に選ぶようになりました。あのライブで、息づかいさえも楽曲を演出するというのを肌で感じたので、今作でもそこを目指したんです。結果として、シンプルな構成で音数の少ない曲が増え、より歌声が浮き彫りになりました」

つまり、ボーカリスト水樹奈々をとことん堪能できるアルバム。楽曲個々が求めるままに歌えばまるで別人のようで、聴くほどにその表現力に驚きもする。声優として多彩なキャラクターを演じてきた彼女だからこそ成せる荒業であるともいえよう。

「以前から楽曲ごとに声の表情が違うとは言われていたのですが、実は自分ではあまり意識していなかったんです。でも今回は、個性の強い楽曲を歌うのが楽しみで楽しみで、その日レコーディングする楽曲の主人公になりきってから、スタジオに向かったりしていました。それがまた楽しくて(笑)」

水樹奈々を“歌もうたっている声優”だと思っている人や、“アニソン歌手”だと思っている人がいるのだとしたら、このアルバムは間違いなく彼らの度肝を抜くだろう。

「少なくとも、水樹って欲張りなヤツだな!! とは思われるかもしれません(笑)。タイトルからしてそうですし。自分がいま純粋に歌いたいと思う曲を集めたら、アンセムがいっぱいになっちゃったという(笑)。でも、私の家のCDラックって、こんな感じなんですよ。ジャンルとか年代とかバラバラで、でも好きなアルバムばかりが並んでる。そういう方、多いんじゃないかなと思います」

あれも好き、これも好き。音楽ファンなら考えずとも理解できる無節操な嗜好を、水樹はしっかりと自身の音楽に落とし込んだ。もちろん、好きな音楽を形にするためのノウハウやスキルが備わっているからこそできたこと。

「11枚目のアルバムだからこそできたことだと思っています。今作は、20枚目という次の節目へ向けての第一歩ということもあって、今までとはまたちょっと手触りが違うかもしれません。新しい水樹を、どうぞご堪能下さい!」

■album…「SMASHING ANTHEMS」 11/11 on sale!!

■ Song list
01.Glorious Break
    ★TVアニメ「戦姫絶唱シンフォギアGX」挿入歌
    作詞:しほり 作曲:上松範康(Elements Garden) 編曲:藤間 仁(Elements Garden)
02.Never Let Go
    作詞:松井五郎 作曲:山﨑佳祐 編曲:山﨑佳祐
03.SUPER☆MAN
    ★TBS「東京EXTRA」11月~1月度テーマソング  new!
    作詞:Kon-K 作曲:Kon-K 編曲:陶山 隼
04.Angel Blossom
    ★TVアニメ「魔法少女リリカルなのはViVid」オープニングテーマ
    作詞:水樹奈々 作曲:光増ハジメ 編曲:EFFY
05.BRACELET
    作詞:藤林聖子 作曲:伊藤寛之 編曲:南田健吾
06.レイジーシンドローム
    作詞:ヨシダタクミ(phatmans after school) 作曲:ヨシダタクミ(phatmans after school) 編曲:藤間 仁(Elements Garden)
07.コイウタ。
    ★TOKYO FM「水樹奈々のMの世界」エンディングテーマ
    作詞:しほり 作曲:中野ゆう 編曲:中西亮輔
08.禁断のレジスタンス -Extended Mix-
    ★TVアニメ「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(ロンド)」オープニングテーマ
    作詞:水樹奈々 作曲:加藤裕介 編曲:加藤裕介
09.The NEW STAR
    作詞:板橋カナオ 作曲:木村篤史 編曲:木村篤史
10.Clutch!!
    作詞:平 朋崇 作曲:光増ハジメ 編曲:光増ハジメ
11.熱情のマリア
    作詞:水樹奈々 作曲:加藤裕介 編曲:加藤裕介
12.エゴアイディール
    作詞:水樹奈々 作曲:水樹奈々 編曲:藤間 仁(Elements Garden)
13.エデン
    ★「animelo mix」TV-CMソング
    作詞:水樹奈々 作曲:藤森真一(藍坊主) 編曲:藤間 仁(Elements Garden)
14.アンビバレンス
    作詞:中村 僚 作曲:中村 僚・中村 友 編曲:中村 友
15.Exterminate
    ★TVアニメ「戦姫絶唱シンフォギアGX」オープニングテーマ
    作詞:水樹奈々 作曲:上松範康(Elements Garden) 編曲:藤間 仁(Elements Garden)

【初回限定盤特典BD/DVD収録内容】

◆未公開ライブ映像集
    LIVE ATTRACTION 2002 at 東京国際フォーラム ホールC
    『アノネ~まみむめ☆もがちょ~』
    『LOVE&HISTORY』
    LIVE SENSATION 2003 at 渋谷公会堂
    『テルミドール』
    『PROTECTION』
    LIVE SPARK 2004 -summer- at Zepp Tokyo
    『NANA色のように』
    『BE READY!』
    LIVE ROCKET 2005?summer? atパシフィコ横浜国立大ホール
    『そよ風に吹かれて...』
    『「好き!」』
    オーディオコメンタリー
◆「SMASHING ANTHEMS」PHOTO SHOOTIN

mini37
記事内容:TOWER+ 2015/11/10号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2015年11月10日 00:00

ソース: 2015/11/10

TEXT:斉藤ユカ