「J-Popシーンに殴り込み? いや、そういうつもりは別にないんだけど。でも……うん、いいですよ。せっかくだから殴り込みをかけましょうか(笑)」。
ラテン・ミーツ・エレクトロニカな傑作『エルニーニョ』から9か月。ヲノサトルがニュー・アルバム『MATHEMATICA』を完成させた。で、これがなんと豪華なゲスト・ヴォーカリスト(東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦、BE THE VOICEの和田純子、浜崎貴司、真城めぐみ、COLDFEETのローリー・ファイン)を迎えた、〈歌モノ〉を中心にした作品なのである。
「僕の場合ひとりで音楽制作をすることが多くて。そうやって自分で全部をコントロールするのは楽しいんだけど、でも同時にコントロールできすぎちゃうとつまらなくもあるんですよ。そこで今回は〈歌〉というところで、自分以外の〈不確定要素〉を入れて表現の枠を広げようと思って」。
それらのヴォーカリストと緻密なサウンドとの共演(それはまるで美しい方程式や定理を思わせる)で、ラテンをベースに幅広い音楽性を披露。ブレイクビーツが炸裂するアッパーな楽曲もあれば、ムーディーなボサノヴァ歌謡も、ひたすら陽気なマンボも、さらにはゴージャス&ドリーミーなバラードだってある。
「音に関しては、自分が持ってるもの(←現代音楽の作曲家だったり実験音楽の演奏家だったりもする)をすべて放り込んで、とにかくテンコ盛りにしようっていう発想ですね。だからボサノヴァの上で得体の知れない電子音が鳴ってたりもするし(笑)」。
ラテン・ポップスのプロデューサーやラテン・ハウスのDJとしての活動も積極的に行っている彼は、ブラジル音楽の魅力をこんな言葉で語る。
「甘い和音。それと時に野蛮なリズム。そういう対極的なものが融合しているところでしょうか」。
それをみずからの音楽に採り込むときに心掛けることは、「引きずり出して検討して、そして再構築するっていうことですね。日本人であるわれわれは、ブラジル音楽を外側から見ることができるわけですよ。で、〈ここが美味しいよね〉〈ここがカッコいいよね〉という部分を拡大して作り直す。そういう客観性を意識的に持つこと」だと彼は話す。
このような徹底的にクールな視点でクリエイトされた、それでいて徹底的にエキサイティングな『MATHEMATICA』。クラブ・ミュージック、ラウンジ、エレクトロニカ、ムード音楽、そしてJ-Pop――あらゆるジャンルを軽々と越境する、この秋の超目玉アルバムです。
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