ESSENTIALS 忘れちゃいけない名盤たち
BABYFACE 『Lovers』 Solar/Epic(1986)
リリース当時は唐突な印象を覚えた処女作だが、気を取り直して聴き改めても、なぜこのタイミングでソロ・アルバムが作られなければいけなかったかという理由はハッキリとわからない。アートワーク(掲載はリイシュー盤のもの)の方向性も不可解だし、ソーラーからのレパートリーという意味でもかなり異色の仕上がりだ。ただし、内容的には後のスーパースターぶりを予感させるに十分なほど、曲作りの才はすでに煌めいている。(JAM)
BILL WOLFER 『Call Me : The Best Of Bill Wolfer』 Castle
このビルはスティーヴィー・ワンダーやマイケル・ジャクソンの作品でプログラミングを担当した鍵盤奏者で、この〈ベスト盤〉はソーラー傘下のコンステレーションに残した82年作『Wolf』を丸ごとリイシューしたものだ。フィニス・ヘンダーソンらのシンガー陣を爽やかに配し、当時の最新テクノロジーを活かした電子万華鏡を開陳。白眉はヴォコーダーを駆使したテンプス・カヴァー“Papa Was A Rollin' Stone”。(出嶌)
CARRIE LUCAS 『Dance With You : The Best Of Carrie Lucas』 Castle
ソウル・トレイン時代からの在籍組のひとり。ディスコ・ブームに色目を使ったレパートリーに埋没していたデビュー時は、ドナ・サマーやグロリア・ゲイナーのような路線を狙っていたのだと思うが、ソーラー時代に辿り着いてからの彼女はまさに〈ソーラー・サウンドの権化〉。リオン・シルヴァーズが腕によりをかけた典型的な〈アノ音〉に乗って、可憐な歌声が響き渡る。(JAM)
CALLOWAY 『All The Way』 Solar/Epic(1990)
ミッドナイト・スターのメンバーとして、また裏方としても、中期以降のソーラー・サウンドを支えたレジーとヴィンセントのキャロウェイ兄弟による初リーダー作。80'sヒップホップ的なエレクトロ感を土台にニュー・ジャック・スウィング~ゴー・ゴーの中間を行くようなビートでポップにファンクするキャロウェイ節は、ヒットした“I Wanna Be Rich”などで炸裂。出身地オハイオの血も騒いだ一枚となった。(林)
COLLAGE 『Groovin': The Best Of Collage』 Castle
フィリピーノのメンバーも含むベイエリア出身らしい人種混成の10人組バンド。発掘者であるウィスパーズのバックを支えていた彼らは、AOR路線のミディアムからエレクトリックなファンクまでを幅広く起用にこなすが、81~85年の楽曲を集めたこのベスト盤を聴けば、いずれの楽曲も西海岸的なスムースネスを下地としていることがよくわかる。ケニー・Gが客演した“Shine The Light”での粋な振る舞いも流石。(林)
THE DEELE 『Eyes Of A Stranger』 Solar/BMGファンハウス(1987)
シンシナティ発の6→5人組。全米チャートで10位まで上昇したロマンティック・バラード“Two Occasions”で知られる本3作目は、これを最後に脱退するLA・リード&ベイビーフェイスの手捌きが前面に出たスロウ主体の作りで、電化ファンク色は“Can-U-Dance”などに残るのみ。隠れ名曲“Let No One Separate Us”などの備えた柔和なスムースネスは、ポップ市場へと越境していく90年代R&Bの礎となった。(出嶌)
DYNASTY 『Adventures In The Land Of Music』 Solar/Unidisc(1980)
ソーラー屈指の傑作アルバム。いまとなってはAクラスのネタとして通りのいいタイトル・トラックに人気の集中する気配も濃厚だが、時代的な真価が宿っているのは“Do Me Right”と“I've Just Begun To Love You”の2曲のほうだろう。レーベルの勢いもそのままに、リオン・シルヴァーズがソーラー・サウンドを完成させた瞬間、それがこの2曲にはものの見事に刻み込まれている。(JAM)
KLYMAXX 『Girls Will Be Girls』 Solar/Unidisc(1982)
後にソロとして活動するフェンデレラとバーナデット・クーパーを擁した女性ヴォーカル&インスト・グループ。名バラード“I Miss You”を含む84年の次作も凄いが、ファンクの充実度で言えばこの2作目も負けていない。レイクサイドの面々によるソリッドなアップに加え、4曲を制作したジャム&ルイスのダンサブルなファンクが畳み掛ける様は圧巻。女らしさに逃げない真っ直ぐな歌もいい。(林)