ファンキーなダンス・チューンにも甘酸っぱさがあって、スロウ・ジャムにも確かなグルーヴが存在したソーラー・サウンドだからして、多くのアーティストにとってはカヴァーやサンプリングにトライしない手はない、ということなのだろう。まず、よく知られているのはミッドナイト・スター“Slow Jam”のアッシャーとモニカによるデュエット・カヴァーか。同じミッドナイト・スターだとLSGが“Curious”をカヴァー。同曲はTOKONA-X“Let me know ya...”での粋な引用も忘れ難い……。
定番ネタということだと、ブルック・ヴァレンタインのフロア・ヒット“Long As You Come Home”でその魔力を発揮しているダイナスティ“Adventures In The Land Of Music”が思い浮かぶが、そもそも同曲はキャンプ・ロー“Luchini A.K.A. This Is It”やアンジー・ストーン“Lover's Ghetto”のネタとしても知られてきたものだ。
さらに羅列を続けていくと……レイクサイドの同名ヒットをベタ敷きしたクーリオの大ヒット“Fantastic Voyage”、ウィスパーズ“And The Beat Goes On”を用いたウィル・スミスの“Miami”、クライマックス“Offer I Can't Refuse”を再生したボーン・サグズン・ハーモニー“Get Up & Get It”なども原曲の魅力を巧みに転用した好例だと言えるだろう。また、キャリー・ルーカス“Dance With You”を再生したファッツ&スモールズ“Music For Pushchairs”のように、ディスコで支持されたソーラーのダンス・トラックはハウス方面での転用が多いことにも留意しておこう。
で、そうしたソーラー・リサイクルでもっとも需要のあるソースはシャラマーの“A Night To Remember”ではないだろうか。数多のカヴァーに加え、クリス・クロスの“Tonite's Tha Night”やメイス&ブラックストリートの“Get Ready”などネタ使いも夥しい同曲は、最近だとYAKKOのR&Bプロジェクト=JHETTにてSoweluが可憐に披露した“Get Ready ~Nite 2 Remember~”の原曲としても脚光を浴びた。このように、時を経てもなお瑞々しいのがソーラー・サウンドなのだ。
▼ジャケは登場順に
クーリオの94年作『It Takes A Thief』(Tommy Boy)