『If You Need Me : Early Years』 Acrobat アトランティックとの契約以前、ロイド・プライス主宰のダブル・Lからリリースしていた62~63年頃の楽曲を集めた初期録音集。R&Bチャート7位となった“It's Too Late”やソロモン・バークも歌った表題曲などのシングル・ヒットが収録されている。この頃はまだ〈バラードを歌うソウル・シンガー〉といったイメージが強く、バック演奏もおとなしいが、ピケットの歌は十分にディープでハードだ。
『In The Midnight Hour』 Atlantic(1966) 出世作となった表題曲を含むアトランティックからのファースト・アルバム。ドン・コヴェイと共作した“I'm Gonna Cry(Cry Baby)”やタミ・リンの客演曲“Come Home Baby”も素晴らしいが、表題曲などを共作したスティーヴ・クロッパーらスタックスのミュージシャンを従えて録音したメンフィス・ソウル曲が圧巻だ。まさにオーティス・レディングの好敵手。真夜中にこんな激唱されたら飛び起きますけど。
『The Sound Of Wilson Pickett』 Atlantic(1967) 前年の“Land Of 1000 Dances”に続いてR&Bチャート1位をマークした傑作ダンス・チューン“Funky Broadway”(ダイク&ザ・ブレイザーズのカヴァー)も収めた4作目。マッスル・ショールズでの録音作でグルーヴィーなサザン・ソウル曲が続出、コテコテに歌い倒す。盟友ボビー・ウォマックが3曲を提供したほか、ファルコンズ時代の名曲“I Found A Love”の再演やラスカルズのカヴァーも収録。
『I'm In Love』 Atlantic(1968) ダンスづいていたピケットがソウル・バラードに重点を置いて作ったアルバムがこれ。表題曲や“Jealous Love”など4曲がこれまたボビー・ウォマックの作で、ギターも演奏しているとあってボビー色はかなり強い。一方では恩人のロイド・プライスやドン・コヴェイの曲を取り上げ、サム・クック“Bring It On Home To Me”のカヴァーにも挑戦。ブルージーな激唱で男の哀愁を語るピケットにまんまと泣かされる。
『Wilson Pickett In Philadelphia 』 Atlantic(1970) ギャンブル&ハフ制作のもとシグマ・サウンド・スタジオで録音した〈フィリー詣で〉盤。演奏/アレンジは(後の)MFSBの面々で、都会的なフィリー・サウンドをバックにピケットのエネルギッシュな歌声が炸裂する。ジャジーな“Don't Let The Green Grass Fool You”やブルージー&ファンキーな“Engine Number 9”などのヒット曲を収録。野蛮さに洗練を加えたようなソウルネスが渦巻く快作だ。
『It's Harder Now』 Bullseye/Rounder(1999) およそ10年のブランクを経て発表した最終オリジナル・アルバム。ロック畑で著名なギタリストのジョン・ティヴェンを中心に〈ブルーアイド〉な面々がオール人力演奏したこれは、全盛期のピケットをイメージしながら彼をネクスト・ステップへと導く意欲作となった。ピケットのギラついた歌唱も健在で、とりわけダン・ペンがソングライトに関与したソウル賛歌“Soul Survivor”は痛快極まりない。