THE SWEET INSPIRATIONS 『The Sweet Inspirations』(1967)
ホイットニー・ヒューストンの母シシーが在籍していた女性ヴォーカル・グループの処女作。南部録音で、スタックス産ヒットなどのカヴァーを中心に、アレサ・フランクリン版との競作とも言うべき“Do Right Woman-Do Right Man”も披露。馴染み深い楽曲をゴスペル上がりならではの神聖さとドス黒いフィーリングで歌い上げた秀作だ。アリフ・マーディンは管弦アレンジを担当。
WILSON PICKETT 『The Midnight Mover』(1968)
全体を指揮したトム・ダウドの下、アリフ・マーディンがアレンジで参加した故ウィルソン・ピケットの豪快ソウル盤。ボビー・ウォマック作のナンバーも多く含み、ふたたび〈真夜中〉に動き出したピケットが、オーティス・レディング亡き後は俺だぜ!と言わんばかりのシャウトで激唱しまくる。それと同時にバラードもしみじみと歌い上げ、当時のアトランティックの雄としての存在感を見せつける。
DUSTY SPRINGFIELD 『Dusty In Memphis』(1969)
白人アーティストに黒いフィーリングを加えることを得意としたアリフ・マーディンが、トム・ダウドやジェリー・ウェクスラーと共同制作。英国出身の女性ポップ歌手をメンフィスのアメリカン・スタジオに赴かせ、サザン・ソウル・マナーで仕上げた一枚だ。スウィート・インスピレーションズを従えて歌うダスティは実にソウルフル。泥臭さのなかに洗練を感じさせるアリフの手腕も見事だ。
ARETHA FRANKLIN 『This Girl's In Love With You』(1970)
アレサの作品にアレンジャーとして関わってきたアリフ・マーディンは、本作からプロデューサーとしても参加。ビートルズ曲のカヴァーなどを含み、この頃からややポップ化していくアレサだが、当時のアトランティックの顔役らしく、歌いっぷりも堂々としたもの。スラム・ヴィレッジ“Selfish”のネタとしても再注目された名バラード“Call Me”はアリフによる美しい弦アレンジが効いている。
DONNY HATHAWAY 『Donny Hathaway』(1971)
クラシックやジャズにも造詣が深い学究肌のダニーとアリフ・マーディンの結びつきは必然だったのだろう。〈ダニー・ハサウェイ版〉がいまもカヴァーされ続ける“A Song For You”を含むソロ2作目。ゴスペル・フィーリングを〈静〉で表現したような楽曲群は、アリフの緻密なアレンジも相まって、聴くほどに震えがくる。ここでのふたりのコラボは73年の『Extension Of A Man』で実を結ぶ。
KING CURTIS 『Live At Fillmore West』(1971)
アレサ・フランクリンの同名(同日)ライヴ盤と共にアリフ・マーディンがプロデュースに関与。だが、こちらはキング・カーティス本人との共同作業で、フィルモアでのファンキー&グルーヴィーな演奏を熱気ムンムンのままパッケージ。ホーン・アレンジに長けたアリフだけにサックス奏者の魅力を引き出すのはお手のものか。なお、最新リイシュー盤にはビリー・プレストンとの共演なども収録。
ROBERTA FLACK 『Quiet Fire』(1971)
アトランティックを代表する女流シンガー・ソングライター、ロバータ・フラックの3作目。彼女とダニー・ハサウェイの共演盤(72年)ではプロデュースにも関与するアリフ・マーディンが、ここでは“See You Then”にて隠し味的なストリングス&フルートのアレンジを担当。ファンキーなメッセージ曲“Go Up Moses”ではバックの〈男声〉に参加するアリフの姿も。甘くビターな味わいの静かなソウル盤。
AVERAGE WHITE BAND 『AWB』(1974)
アリフ・マーディンのプロデュースで傑作を連発したスコットランド発の白人バンド。名曲“Pick Up The Pieces”を含むアトランティックでの初作で、リスナーの人種を選ばないライト・ファンキーな楽曲群は、黒人音楽を都会(NY)的に仕上げるアリフ仕事の真骨頂だろう。後に世に出された、アリフの手が加わる前のデモ集(AOR風)と聴き比べると、本作のほうがモア・ソウルフル。