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第41回 ─ 黒い幻は24カラット

デイル・ウォーレンのイイ仕事

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2009/09/16   18:00
ソース
『bounce』 314号(2009/9/25)
テキスト
文/出嶌 孝次、林 剛

DEON JACKSON
『Love Makes The World Go Round』
 Atco(1966)
スモーキー・ロビンソンの甘い声をハスキーにしたようなヴォーカルが印象的なミシガン州出身のシンガー。デトロイトのカーラの音源を配給したアトコから出された本作で、デイル・ウォーレンは数曲のアレンジを手掛けている。ブリル・ビルディング系の甘酸っぱさが漂う表題曲などは、デイルがアレンジャーとして活動した初期モータウンの曲が持っていた雰囲気にも近い。*林

GIGI & THE CHARMAINES
『Gigi & The Charmaines』
 Ace/Kent
〈シンシナティのシュープリームス〉とでも言いたくなる60年代のガール・グループ。デイルは彼女たちの作品にも、ドン・デイヴィスらデトロイトの気鋭たちと関わっていた。未発表音源を含むこの編集盤は、冒頭からデイルがペンを執った“Guilty”が登場。シュープリームス調のこれなどを聴くと、自身が抜けた後に大成したモータウンに対抗したかのような気配も窺える。*林

ISAAC HAYES
『The Isaac Hayes Movement』
 Enterprise/Stax(1969)
24カラット・ブラック以前のデイル・ウォーレンのスタックス仕事といえば、アイザック・ヘイズの作品におけるアレンジが有名だろう。クラシックの素養があるデイルのセンスは、ストリングスを壮大に響かせた長尺曲で存分に発揮され、ヘイズの〈シンフォニック・ソウル〉を完成に導いた。ビートルズを取り上げた“Something”での新奇なアレンジもデイルならではか。*林

THE STAPLE SINGERS
『The Staple Swingers』
  Stax(1971)
後期スタックスを精神面から牽引した家族グループの、レーベル移籍後3作目。デイルはメロディカやヴィブラフォンを操るテリー・マニングを重用しながら、実に9曲ものアレンジを任されている。ヒットした“Heavy Makes You Happy(Sha-Na-Boom Boom)”には関与していないが、ポップにして高潔なデイルのサウンド・デザインはゴスペル・マナーの太い歌唱にもマッチしている。*出嶌

ERNIE HINES
『Electrified』
 We Produce /Stax/ユニバーサル(1972)
ミシシッピの中堅シンガーがスタックス傘下のウィー・プロデュースに残した唯一のアルバム。アレンジャーとしてデイルも参加しており、厚くて熱い演奏をファンキーに聴かせるのはバーケイズの面々だ。ピート・ロック& CL・スムース“Straighten It Out”に使われた“Our Generation”など、24カラット・ブラックと並ぶネタの宝庫……ってことで、このたびMURO監修で復刻されたばかり。*出嶌

LUTHER INGRAM
『Pity For The Lonely: The Ko Ko Singles Volume 1』
 Ace/Kent
アイザック・ヘイズのバンド=ムーヴメントがバックを務めることもあったルーサー・イングラムの楽曲にもデイルはアレンジで参加。例えば、先にジョニー・テイラーが歌っていた“Ain't That Loving You(For More Reasons Than One)”はジョニー版とは異なるスロウ仕立てで、この切なげなムードをデイルのアレンジ・センスだと解釈しても間違いではないだろう。*林

THE 24-CARAT BLACK
『Ghetto: Misfortune's Wealth』
 Enterprise/Stax/ユニバーサル(1973)
シンシナティで活動していたダイタリアンズを前身とし、デイルがその鬼才ぶりを発揮したグループ。スタックスでも異彩を放ったその音世界は、単にジャズ・ファンクという言葉では片付けられないほど複雑で濃密でスピリチュアルなもので、黒人ゲットーの緊張感や焦燥感を生々しく伝えている。ほぼ全曲がラッパーたちにネタ使いされたのも納得だ。*林

ELOISE LAWS
『Ain't It Good Feeling Good』
 Invictus(1977)
デイルとはかつてモータウンで顔を合わせていたに違いないH=D=Hのブライアン・ホランドが制作したロウズ一家の歌姫によるファースト・アルバムに、デイルはアレンジャー/コンダクターとして参加。表題曲のような洒落たリズムのミディアムは、24カラット・ブラックで中毒性の高いグルーヴを生み出したデイルならではと言えそうで、終焉間近のインヴィクタスに新風をもたらした。*林