辣腕ジャズ・ドラマー、ノーマン・コナーズのスムースなソウル作法
本来はジャズ・ミュージシャンだがジャズ・ファンからはソウルの人と距離を置かれ、ソウル・ファンにはジャズの人として見られてしまうあたりはロイ・エアーズ似か。はたまた、楽器奏者でありながら、それよりもプロデューサーとしてソウル・ミュージックのアーバン化に寄与したあたりはクインシー・ジョーンズ的と言えるか。今回の主役、ノーマン・コナーズとはそんな男である。
48年、フィラデルフィア生まれのジャズ・ドラマー。地元のテンプル大学とNYのジュリアード音楽院でジャズを学んだというノーマンは、ファラオ・サンダースに見初められ、ファラオのバンドで活動を始めている。初録音はアーチー・シェップの67年作『Magic Of Ju-ju』。この頃はまだ駆け出しのジャズマンだったが、徐々にその才能が認められ、72年には初のリーダー作をブッダのジャズ部門=コブルストーンから発表。親会社のブッダに移籍した後もしばらくはジャズ・アプローチの作品が続くが、ニュー・ソウル・ブームを機にソウルがジャズなどと融合して洗練を遂げていく時代の流れをノーマンは好機と捉えたのだろう。彼はマイケル・ヘンダーソンとジーン・カーンが歌う“Valentine Love”(75年)やヘンダーソンが歌う“You Are My Starship”(76年)など、シンガーを起用したジャジーなソウル曲をリリースしていく。結果、これらがチャートで好成績を収め、R&Bプロデューサーとしてヴァイタミン・Eなどを手掛けながら新たな道を歩み始めていくのだ。同時に別部隊的なアクエリアン・ドリームをシーンに送り込み、アリスタ移籍直前の77年頃からはスターシップ・オーケストラも始動。とにかく〈いい耳〉を持ち、歌ゴコロを解していたノーマンは、ジーン・カーンやフィリス・ハイマン、それにグレン・ジョーンズやボー・ウィリアムズといった実力派シンガーたちを彼らが無名だった頃からフックアップし、同時に自身の音楽性をも磨き上げてきた、真のソウル・スタイリストと言うべき存在なのである。
過去の作品がレア・グルーヴ文脈で再評価されるも、ヘタにその才能を安売りせず、己のジャジー・ソウル道を歩んできたノーマン。今年もクリストファー・ウィリアムズやダニー・ボーイらがソウルフルな歌声を添えた9年ぶりの新作『Star Power』を発表し、そのスタンスが何ひとつ変わっていないことを証明してくれた。輝ける才能を乗せたノーマン船長のスターシップは、音楽界の荒波をものともせず、いまも順調に航海を続けているのだ。
▼ノーマンがドラマーとして参加した作品を一部紹介。
ファラオ・サンダースの74年作『Wisdom Through Music』(Impulse!)