誕生以来、ダンスホール・レゲエは世界中に伝播し、いまではメインストリームの至るところで影響を見て取れます。USにおいては古くからランDMCがイエローマンをフィーチャーしたり、KRS・ワンもダンスホールの手法を採用。90年代以降も多くの場面でその影響が感じられましたが、現在の流れを決定付けたのはやはりビヨンセ&ショーン・ポールの“Baby Boy”でしょう。それと同じ方法論でリアーナがブレイクするなど、気付けばヒップホップ/R&Bとダンスホールは切っても切れない関係となっています。
また、パンクの時代からジャマイカ音楽と縁の深かったUKでも、トリップ・ホップ〜ジャングル〜ドラムンベース〜ダブステップといった具合に、脈々とダンスホールの血が受け継がれていますし、さらにカリブ〜南米においても電化クンビアやレゲトン、バイリ・ファンキなどからその要素を汲み取れ、それらのビートの感覚的な垣根はどんどんなくなっていると言えるでしょう。
そして今日、ダンスホールの定義はさらに曖昧になってきています。世界中に広がるのと同時にさまざまな音楽がフィードバックされた結果、マヴァードやセラーニ、メジャー・レイザーやポワリエの作品が良い例であるように、ダンスホール・レゲエはすべてを内包し、激しくヒップホップ/R&Bなどと融合し、同時にラスタな歌モノも混在するようになっているからです。ただ、そうしたジャンル的な定義をもっとも気にしていないのがジャマイカ国民のような気もします。要するに、彼らにとってサウンドシステムの現場で楽しむ音楽全般がダンスホールということになるのでしょうか!?
▼関連盤を紹介。
左から、リアーナの2005年作『Music Of The Sun』(SRP/Def Jam)、マヴァードの2009年作『Mr. Brooks...A Better Tomorrow』(VP)、メジャー・レイザーの2009年作『Guns Don't Kill The People...Lazers Do』(Downtown)、ポワリエの2010年作『Running High』(Ninja Tune)