いま活躍している10代のバンドとは違う世界を作り出したい
何たって14歳、中3トリオである。近年それほど珍しくない10代のアーティストのなかでも突出して若いが、その実力に疑いのないことはレーベル主宰の浅井健一がみずからプロデュースをしているという事実を記すのみで十分だろう。まだあどけない少年の顔つきながら魅力的なブルース・ヴォイスを持つ鴻池ハルカ(ヴォーカル/ギター)も、自身に授かった才能について自覚的だ。
「いま活躍してる10代のバンドとは違う世界を作り出して行きたいっていうか、一線を画したい。実際そうなると思うし、普通じゃないバンドとして常識を覆したいです」(鴻池:以下同)。
ファースト・アルバム『clockworked lemon』に収められた7曲は、ある意味古色を帯びるほどの正統派だ。ダークなサイケデリック感覚やポップで軽快なシャッフルのリズム、ダーティーなガレージ・サウンド、アコギとピアノの叙情的なアプローチなど、さまざまな方向から3ピース・ロック・バンドの核心に迫るスタイルが、14歳の仕業であるとはにわかに信じ難い。しかしそれは、フェイヴァリットにピンク・フロイドやローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリン、ニルヴァーナやレッチリ、シガー・ロスを挙げ、ブランキー・ジェット・シティやミッシェル・ガン・エレファントへのリスペクトを表明する鴻池にとってごく自然なことで、ここを出発点に未来へと向かう決意表明に他ならない。
「勢いだけじゃなくて落ち着いた感じの、クールなやつも好き。歌詞も情熱的なものとか理屈っぽいものが好きじゃなくて、感覚でメッセージを感じ取れるようなテイストがいいんですよ。一見一般受けしないような音楽かもしれませんが、必ず幅広い世代に届くと思います。ただこれからはジャンルを越えて、打ち込みとかも試してみたいし、ウッドベースを弾いたりとかそういうこともやってみたい。失敗してもカッコイイし、成功すればどんなジャンルでも対応できるし、バンドとしてどんどん進化して行きたいです」。