40年の時を超えて封印を解かれた『With Love』と、その姉妹盤たち
女性グループはソウル・ミュージックの華だ。が、スポットライトを浴びるのはほんの一握り。実力がありながらもヒットに結びつかず、涙を呑んだグループも少なくない。そんな〈不遇の女性グループ〉として語られるのがシスターズ・ラヴだ。80年代以降はレア・グルーヴの文脈でカーティス・メイフィールド曲のカヴァー“Give Me Your Love”が持てはやされたが、当時の彼女たちはシングルしか出せず、悔しい思いをしていた。ところが先日、モータウン傘下のモーウェストから72年に発表予定だったアルバム『With Love』がついにリリース。約40年ぶりのリヴェンジとなったのである。
シスターズ・ラヴは、レイ・チャールズの女性コーラス隊であるレイレッツが分裂して誕生したとされる。結成メンバーはメリー・クレイトンを含む4人で、68年にマンチャイルドから“This Time Tomorrow”という優雅なミディアムでデビュー。その後メンバーが抜け、クララ・ウォード・シンガーズやアイケッツに参加していたヴァーメッティア・ロイスターが加わるが、ここでリードの奪い合いが生じ、結局メリーはソロに転向。ディープなしゃがれ声のヴァーメッティアが新リードとなった。
すると、そんな彼女たちをA&Mのハーブ・アルパートがいたく気に入り、シスターズ・ラヴはA&M初のソウル・アーティストとして契約を交わす。71年にはジーン・チャンドラーの制作による“Are You Lonely?”がR&Bチャート20位を記録するヒットとなった。スウィート・インスピレーションズに通じるゴスペリッシュな感覚とアイケッツ的な泥臭さ……それは他のレーベルからも目を引き、最終的にはモータウン(モーウェスト)が彼女たちを獲得。モータウンとしては、新生シュープリームスとともに70年代の同社を担う女性グループとして期待していたことだろう。実際、72~75年に発売されたシングルはアフロセントリックでウーマン・リブ的な主張も込めたニュー・ソウル時代らしい好ナンバーばかりで、そのパワフルでアグレッシヴなヴォーカルはスプリームスをも圧倒していたと言っていい。ウィリー・ハッチがサントラを担当したブラック・シネマ「The Mack」の劇中では“Now Is The Time”(A&M時代のシングル)も熱唱。結局アルバムは出されずモータウンから契約を打ち切られるが、彼女たちの未発表アルバムがここにきて世に出されたように、あの時代の自由奔放な女性たちの歌は決して古びることがなく、むしろいまの時代にこそ突き刺さる。今回はそんな女性たちの逞しい歌に耳を傾けてみたい。
▼関連盤を紹介。
シスターズ・ラヴの編集盤『Give Me Your Love』(Soul Jazz)