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Seun Kuti & Egypt 80『From Africa with Fury : Rise』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2011/07/07   17:02
ソース
intoxicate vol.92 (2011年6月20日発行)
テキスト
text:篠原裕治

やっぱり王子は別格

フェラ・クティの末の息子、シェウン・クティの新作が登場した。3年前の前作も傑作の声が高かったが、今回はそれを上回る強力な作品に仕上がった。

本作はブライアン・イーノをプロデューサーに迎えたブラジル録音。ティナリウェンのプロデュースでお馴染 みのジャスティン・アダムズもギターで参加している。イーノといえばしばしば自己主張の強いプロデュースをするので、聴く前はアフロビートが本来持つパワーを減殺するのではないかという不安もあったのだが、結果は上々だ。

ここ数年はアフロビートが大きなムーヴメントとなり、アフリカ以外の国からも多くのアフロビート・バンドが生まれている。フェラ・クティが作り上げたアフロビートという遺産が今の時代に受け継がれていくことは喜ばしいし、意義もあると思うが、正直に言って フェラを超えるものにはまだ出会えていない。しかし本作を聴けば、やはり血は争えないな、と納得せざるを得ない。別格だ。前作はヴォーカルが少し弱いかな、という気もしていたのだが、今回はそれもまったく感じなかった。

サウンドの迫力も申し分ない。現在はフェラが活躍した時代に比べてレコーディングの技術も格段に進歩している。アフロビートのように数多くの楽器が使用されるサウンドの場合、それぞれの楽器の音はクリアに録れるし、分離の良さも比べものにならないだろう。だがその分、フェラの諸作で感じられたオーケストラの音が塊となって迫ってくるようなあの凄味を出すのは、逆に難しいとも思える。それをここまでの迫力あるサウンドに仕上げたのは、やはりイーノの手腕なのか。前作はマルタン・メソニエがプロデュースを務めていたし、名エンジニアのゴドウィン・ロギーも引き続き参加。そういったヴェテランにサウンド・プロダクションを任せるというのは、なかなか鋭いといえるかも。

いずれにしても、21世紀に発表されたアフロビートとしては最高峰の1枚だ。