felicityからの最初のリリースは2003年作『or』。Spangle call Lilli line(以下SCLL)は、現在のレーベルのラインナップのなかでもカジヒデキに次いで古参のポップ・ユニットだ。各々がデザイナーやカメラマンとしての顔も持ち、さらに大坪加奈はソロ名義のNINI TOUNUMA、藤枝憲と笹原清明は点と線なるデュオとしても活動するなど、無尽蔵の創造性を多様な形態で表現し続けている。
2010年は、永井聖一(相対性理論)、益子樹(ROVO)、美濃隆章(toe)の3者をプロデューサーに迎えた3作を連続ドロップ。シングル“dreamer”と8作目『VIEW』ではエアリーな歌を中心に据えたオルタナ・ポップを、9作目『forest at the head of a river』では流麗なインプロから派生した優美なポスト・ロックを提示したのち、6月の単独公演を最後に動きを止めていたが、このたび1年3か月ぶりの新作が到着した。その『New Season』は、うち4曲の新曲を吉田仁(SALON MUSIC)がプロデュースしたEP。〈性急なリフ主体の疾走感溢れるギター・ロック〉というこれまでの彼らの方向性を思えば不意打ちを食らう冒頭曲から滋味深いレゲエ・ダブまで、どれも3人に訪れた新しい季節を明快に告げる音楽性ながら、彼ららしいたおやかなニュアンスも全編に匂わせた仕上がりだ。上述の永井、やけのはら、石橋英子による既発曲の再構築版と合わせて、SCLLの記名性を再確認できる一枚となっている。
▼Spangle call Lilli lineの近作を紹介。
左から、2008年作『PURPLE』、2010年のシングル“dreamer”、同年作『VIEW』『forest at the head of a river』(すべてfelicity)