彼は自分のスタイルを尊重してくれる
「ブレインフィーダーは、クリエイティヴでオープンな人の集まりね。このレーベルはその名の通り、人の脳にアイデアをフィード(供給)しようとしているのよ」。
LA生まれのコリアンで、2008年に最初の作品集となる 『Bedtime Lullabies』をリリースして以降、着々と注目を集めてきたトキモンスタことジェニファー・リー。いわゆるビート・ミュージック界隈の著名な女性クリエイターとなるとパースート・グルーヴズあたりが思い浮かぶが、NYで活動する彼女に対し、トキモンスタはさしずめ西の紅一点といったところだろうか。
とはいえ、そういった性別などと結びつける必要もなく、彼女のビートは彼女だけの饒舌な個性を見せつける。昨年リリースされたファースト・アルバム『Midnight Menu』のビート群は、ゆったりしたタイム感のなかでメロディアスな展開を見せ、時にはスムースに逸脱し、飛躍し、またゆっくりとひとつの流れに還ってくる。文字にしても何のこっちゃだが……そんな大きな円を描くようなビート展開の魅力は、ブレインフィーダーからの初リリースとなった『Creature Dreams』でも確認できるはずだ。
「いつも〈Low End Theory〉みたいな場所でお互いの音楽を聴かせ合ってるから、ブレインフィーダーからリリースするのも自然な流れだったわ。『Creature Dreams』は、この作品を作った時点での私の音楽スタイルを象徴してる。オーガニックで、パーソナルな感覚を作品に描きたかった。これは特定のサウンドを期待してる誰かを喜ばせるためというより、自分自身のために作ったものなの」。
フライング・ロータスは主に収録曲の選定に関与したのみで、「自分のスタイルを尊重してくれる他の人の意見が助けになったりするの」とのこと。そうやって深まった信頼関係は、来年に控えるフル・アルバムにも繋がっていくのだろう。
「自分のなかで、過去の作品はこのEPに向けて自分をビルドアップしていくものだったと思ってるの。そしてこのEPは次のアルバムのためのステップね。一つ一つのプロジェクトをどう発表していくかという意味において、私は自分の音楽で何がしたいのか、はっきりとわかってるのよ」。
▼関連盤を紹介。
左から、トキモンスタの2010年作『Midnight Menu』(Listen Up)、トキモンスタが参加したShing02の2010年作『400[甦]』(Mary Joy)