PHILLY DEVOTIONS 『We're Gonna Make It』 Essential Media /MAGNUM CAT
アルバムを出せずに終わったフィリー出身のヴォーカル・グループのシングル全8枚(73〜76年)を収録した編集盤。うち5枚がジョン・デイヴィスの制作で、華麗なダンサーからスウィートなスロウまでフィリー印の名曲が揃う。“I Just Can't Say Goodbye”やリトル・アンソニー&ジ・インペリアルズ曲のカヴァー“Hurt So Bad”で炸裂するマット・コヴィントンの裏声リードがとにかく強烈だ。
WILLIAM DeVAUGHN 『Be Thankful For What You Got』 Collectables(1974)
DC出身の元設計技師がフィリーのオメガ・プロダクションにデモ・テープを送り、900ドルを支払ってシグマ・スタジオで録音した名作。マッシヴ・アタックにカヴァーされた表題曲が有名だが、この美しく滋味深いサウンドを、MFSBの面々を束ねて編み上げたのがジョン・デイヴィスだった。ジョンによるオルガンやサックス、フルートの音色も優しい。
PHYLLIS HYMAN 『Ultimate Phyllis Hyman』 Arista
フィリー出身の情熱歌姫のベストで、ここに収録されているデビュー作からの“I Don't Want To Lose You”がジョン・デイヴィスのプロデュース/アレンジとなる。スピナーズが歌っていたオリジナルはトム・ベルの制作だったが、ジョンが手掛けたこちらのヴァージョンはよりスマートで淑やかな印象。ピアノのフレーズを加えているあたりはジョンならではか。
BRENDA & THE TABULATIONS 『I Keep Coming Back For More』 Chocolate City/Reel Music(1977)
60年代から活動する男女4人組によるシグマ録音盤だが、これは紅一点ブレンダ・ペイトンの実質的なソロ作と言えるもの。ジョン・デイヴィスは前半3曲のプロデュース/アレンジに関与している。ジョン作の“I'm A Superstar”はいかにもディスコだが、続く流麗なスロウと軽快なミディアムはフィリー度満点だ。
TOUCH OF CLASS『Love Means Everything』 Midland International /Stack-O-Hits(1976)
フィリーの4人組ヴォーカル・グループの初作(を改訂したスタック・オー・ヒッツ盤)。フィリーらしいダンサーや美麗なスロウを含むが、ミッドランド・インターナショナルにおけるジョン・デイヴィス仕事らしく、派手なディスコ調の曲も飛び出す。フィリー・デヴォーションズ“I Just Can't Say Goodbye”もカヴァー!
FIRST CHOICE『Hold Your Horses』 Gold Mind/Salsoul/Unidisc(1979)
フィリー・ソウルのディスコ化に拍車をかけたこの女性3人組にも、ジョン・デイヴィスはフィリー・グルーヴ盤から関わっていた。名曲“Love Thang”を含むサルソウル時代の本作では、メドレーのトップを飾るフィリー・ダンサー“Let Me Down Easy”で滑らかなサックスを披露。3人のヴォーカル&ハーモニーと同等の存在感を放つ名演だ。
DIANA ROSS『The Boss』 Motown(1979)
70年代後期のアシュフォード&シンプソン夫妻のアルバムにてポール・ライザーと管弦アレンジャーとしての役割を分け合っていたジョン・デイヴィスだが、それは同時期に夫妻が手掛けたダイアナ・ロスの本作でも同じだった。ジョンがアレンジを担当したのは“It's My House”。注意して聴けば、ジョンの手捌きにはフィリー的な上品さや大らかさがある。
LOOSE CHANGE『Loose Change』 Casablanca/BBR(1979)
リミックスの達人、トム・モウルトンが手掛けた〈裏ファースト・チョイス〉的なガールズ・トリオによる唯一のアルバム。シグマ・スタジオの精鋭に交じって、ジョン・デイヴィスは“Darling, That's Me”でフェンダー・ローズをメロウに奏で、サックス・ソロまで披露してみせる。器楽奏者としてのジョンの個性がもっともよく表れた一曲だろう。