活動当初からソングライティングにも積極的に関わってヒットを飛ばしていたベンE・キングではあるが、それらの共作者/プロデューサーに名を連ねるジェリー・リーバー&マイク・ストーラーは、NYの〈ブリル・ビルディング〉にいたソングライターのコンビで、ロックンロールの歴史……というか近代の音楽史において欠かせない存在だ。
彼らは黒人街で育ち、リズム&ブルースを身近に浴びて育ったユダヤ系の青年たち。50〜60年代の黒人音楽の裏方にはそうした出自の面々が多いが、50年代からビッグ・ママ・ソーントン“Hound Dog”をはじめ、同曲も取り上げたエルヴィス・プレスリーの“Jailhouse Rock”、コースターズの“Yakety Yak”、チャック・ジャクソンの“I Keep Forgettin'”、ドリフターズの“Ruby Baby”(ドナルド・フェイゲンやビョークらがカヴァー)や“There Goes My Baby”などなどを次々にヒットさせ、ベンE・キングの“Stand By Me”“Spanish Harlem”も生み出した。なお、その後者を共作したのが、コンビのアシストをしていた若きフィル・スペクターである。いまでは何かと切り離して捉えられるこれらの音楽だが、その舞台裏でこうした共通の才能が蠢いていたことも忘れてはならない。
▼リーバー&ストーラーのペンによる楽曲を集大成したアンソロジー。
左から、『The Leiber And Stoller Story Volume 1: Hard Times The Los Angeles Years 1951-56』『The Leiber And Stoller Story Volume 2: On The Horizon 1956-62』『The Leiber And Stoller Story Volume 3: Shake 'Em Up & Let 'Em Roll 1962-69』(すべてAce)