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第66回――リアル・ベンE・キング

知られすぎたキングのスタンダードと、知られざるキングの名作!

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2013/04/24   00:00
ソース
bounce 354号(2013年4月25日発行)
テキスト
ディスクガイド/林 剛、出嶌孝次


THE DRIFTERS 『Up On The Roof』 Atlantic/ワーナー(1962)

すでにベンが脱退した後に編纂されたベスト盤ながら、さまざまな録音が入り乱れた手軽な一枚でもある。ベンがリードを取るのは、ベンジャミン・ネルソンの変名でソングライトにも関わった名曲“There Goes My Baby”、日本では越路吹雪のカヴァーで知られる“Save The Last Dance For Me”、ポーマス&シューマン作の若々しい“This Magic Moment”など。勢いと声の個性はやはりベンがズバ抜けているか。*出嶌

 

BEN E. KING 『Don't Play That Song!』 Atco/ワーナー(1962)

“Stand By Me”の大ヒットを生んだ通算3枚目のソロ・アルバム。感傷的でエレガントなストリングス使いやクラシックやゴスペルを折衷した品の良いアレンジはリーバー&ストーラーの手腕の賜物だろう。ザラついた黒さを発散するベンの歌いっぷりもビッタリ合って、簡素ながらも爽やかな聴き心地に仕立てられている。表題曲はアトランティック代表のアーメット・アーディガンが書いたナンバー。*出嶌

 

『Apollo Saturday Night』 Atco/ワーナー(1964)

NYの〈アポロ・シアター〉で行われたアトランティック所属アクトによるショウケースのライヴ盤。ファルコンズからオーティス・レディング、そしてドリス・トロイ、ルーファス・トーマス、コースターズ……と人気者を露払いにベンが登場する。別格扱いも凄いが、自信に溢れた歌唱のパワフルさこそが黄金時代の証だ。なお、オーティスも“There Goes My Baby”や“Stand By Me”を自作で取り上げていたりする。*出嶌

 

BEN E. KING 『What Is Soul?』 Atlantic UK/ワーナー(1967)

アトランティックとの契約が不安定になった時期にUK主導で編集された変則的な一枚。67年のソウル音楽の先端を考えると、美しいストリングスや清涼なコーラスのスタイルも古めかしいように思えるが、一方ではベンの熱いノドがディープな味わいを帯びて円熟しはじめているのも透けて見えてきたり。時代を切り離して考えれば、単純にアルバム未収録のままだったあれこれがまとめて聴けるのはありがたい。*出嶌

 

BEN E. KING 『Supernatural』 Atlantic/ワーナー(1975)

アトランティックと再契約しての第1弾。NYの重鎮バート・デ・コトーと、メイン・イングリーディエントを一時脱退していたトニー・シルヴェスターのプロデュースで、AWBを意識したような復帰シングル“Supernatural Thing Part. 1”を筆頭に、情熱的に歌い上げられたファンク〜ニュー・ソウル路線の曲が並ぶ。サム・ディーズ作のアップやバラードを持ち前のディープネスを発揮して歌うベンの説得力も凄い。*林

 

BEN E. KING 『I Had A Love』 Atlantic/ワーナー(1976)

デ・コトー&シルヴェスター制作のNY録音曲とノーマン・ハリスらのプロデュースによるフィリー録音曲が混在したアトランティック復帰第2弾。アシュフォード&シンプソンのバラードとなる表題曲やサム・ディーズ作のダンサー“No Danger Ahead”など絶頂期のフィリー・サウンドを浴びた曲が秀逸で、“Smooth Sailing”“We Got Love”はモダン・ソウルの文脈でも人気が高い。エレガントでゴージャスな名盤だ。*林

 

BEN E. KING 『Let Me Live In Your Life』 Atlantic/ワーナー(1978)

LA、NY、メンフィスで録音。ラモン・ドジャーが手掛けるモダンでメロウな楽曲を中心に、スタックスのジム・スチュワート&ベティ・クラッチャーが制作したサザン・バラード、パトリック・アダムスが手掛けたダンス・ナンバーも含むヴァラエティーに富んだ内容で、ベンはシンガーとしての器用さを見せる。ラモン制作の表題曲など、ジョーンズ・ガールズらを従えて色気を滲ませながら歌うベンがたまらない。*林

 

BEN E. KING 『Music Trance』 Atlantic/ワーナー(1980)

タイトルが示唆するように当時のダンス/ディスコ・ブームに狙いを定めた意欲作。バート・デ・コトーと組み直しての前半は、ガラージ・クラシックとしてもお馴染みの表題曲を筆頭にNYアーバン・サウンドの粋を見せつける。後半では、AWBに続くアトランティックのファンク・バンドとしてマス・プロダクションがベンを新境地に導いた。両サイドともメロウネス漂うミディアムが用意され、これがまた美味。*林

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