みんなで音楽を分かち合えれば
ハマ「いつも(の連載で)は僕が自分のライブラリーのなかから盤を選んで紹介しているんですが、今回はMUROさんがオススメの盤を持ってきてくださったということで……」
MURO「はい。前にこの連載を見た時にライト・オブ・ザ・ワールドを紹介されていたので思いついた、僕のミックスCD『ELEGANT FUNK MIXED BY DJ MURO』を。このバンドが前身となったインコグニートに代表される、アシッド・ジャズっていうヴィンテージな音をめざしてみようっていうムーヴメントが80年代半ば頃にイギリスから入ってきて、DJたちがそういうレコードを探してかけたりしてたんです。ハマくんはそういったポジティヴでスカッとするサウンドが好きなのではと思って、僕のミックスのなかだとこれがハマるかなと。〈エレガント・ファンク〉って僕ら身内で決めたようなジャンルなんですけど、キレイな言葉と、ある意味ダーティーな言葉を組み合わせて新しい流れを作ろうっていう。もともと水戸の小さいレコード屋さんでの会話からポロッと出てきたワードだったんですけど、それがグッときて。どういうのかっていうと、1曲で雰囲気をガラッと変えられる感じの曲だったり、スカッとする爽快感があるような、80年代のブラック・コンテンポラリーですね。でも日本ではあんまり評価されてなかったりしてて。デイトンの“Sound Of Music”っていう曲があるんですけど、これがいちばんのキーになってます」
ハマ「この曲は〈ヨーロピアン・ミックス〉なんですね」
MURO「そうですね、ちょっとヨーロッパっぽい洒落たテイストが入ったりとか」
ハマ「知ってるアーティストの曲も結構入ってますね。ドナルド・バード……この間お亡くなりになりましたね。それからルイス・ジョンソンとか。それにしても、そのレコ屋での会話から〈エレガント・ファンク〉というワードが生まれたっていうのもおもしろいですね」
MURO「キラキラしてる。女の子も聴きやすい感じのね」
ハマ「もうちょっと60年代のほうに寄りすぎると、聴けないとは言いませんけど、ちょっとダーティー感が濃いじゃないですか」
MURO「そうそう。みんなで音楽を分かち合えたら楽しくなるなと思って。ヒップホップでもずっとそれを考えてて、ラップに関しても5~6年前ぐらいから言ってるんですけど、女の子が見ても男の子から見ても、大人も子供もカッコイイと思えるアーティストが出てこないかなとずっと思ってて、オーディションもやったことあるぐらい。そんな矢先にね、ももクロさんからオファーをいただいたりして……」
ハマ「あれはびっくりしました! 僕、ももクロも結構好きなんですけど、彼女たちを動かしている大人がすごい好きで。音楽に対してすごく熱いから。そんななかでMUROさんが参加されるっていうのは、まさか中のまさかでした(笑)」
MURO「ファンキーなのがいいって言われていて、デモ音源を何曲か渡したんですけど、『Diggin' For Beats』って最近出したインスト・アルバムの曲を選んできてくれて。ルーマニア人のすごいマニアックなものだったんで、びっくりしましたよ。こうやってまたいろいろ変わっていけばおもしろいなと」
ハマ「いつか、ももクロのライヴでMUROさんが後ろにいるっていうのを観たいです(笑)」
MURO「そういうことを通じてヒップホップが広がりを見せられれば……と思うんですけどね」
ハマ「そうですね、いっそう幅広く聴かれるようになるといいですよね――そうだ、今日僕、MUROさんといっしょに写真を撮りたいと思って持ってきたものがあるんです。7インチを漁るようになった頃にアメリカ・ツアーに行ったんですよ。で、僕らが出演した〈SXSW〉の会場の横にあったすごいでっかいホールみたいな所で、中古楽器市とレコ市をやってて。言い方悪いですけど、レコードがゴミみたいな値段で売ってたりするんですよ(笑)。僕とドラムのレイジとで掘ってたんですが、走って戻らなきゃいけないぐらいの時間切れだったのに止められなくなってしまって。最後2つ箱があったんですよ、7インチの。それを2人で1箱ずつ見た時に見つけた、『シャフト』の7インチ・サントラ! フランス盤ですかね?」
MURO「すごい。俺も持ってないよ!」
ハマ「見つけた時は2人で爆笑しちゃって。3ドルくらいだったと思います」
MURO「向こう行くとそういうことがあるんだよね。しかもヨーロッパ盤だとB面が違う場合があるんだよ、アメリカ盤と」
ハマ「まったく同じレイアウトだけど色違いで曲も違う……みたいなのもありますよね。これはもう抱いて帰りましたよ(笑)。さっき言ってたMUROさんの『HAWAIIAN BREAKS』に出会って7インチを掘るようになって、当時『シャフト』のサントラなんかは、映画をチェックするようになった頃でドンピシャだったから、すごく嬉しかったんです。だから、この日本盤の7インチといっしょにぜひ持って撮らせてもらいたいなと思って」
MURO「ああもうぜひぜひ!」