長いキャリアを誇るだけあってスピナーズのリサイクル例は数多いが、まずモータウン時代の曲ということでは“It's A Shame”に尽きるだろう。UKのモニー・ラヴがカヴァー・ラップ的な“It's A Shame(My Sister)”(90年)を披露したことは、90年代に同曲のフリー・ソウル的な評価を確立したものだ。とはいえ本国USでの評価はグループが全盛期を迎えたアトランティック時代に集中しており、ピンプ・ラッパーのラッピン4テイが94年に同趣向で引用した“I'll Be Around”は全国区のヒットを記録。同曲はグループの代名詞的なヒットだけあって、ホール&オーツやジョーン・オズボーン、シールらが各々のソウル・カヴァー企画盤で取り上げている。
また、爽快な“Could It Be I'm Falling In Love”もフィリー・クラシックとしてカヴァーの定番になっており、デヴィッド・グラント&ジャッキー・グラハムやレジーナ・ベルが取り上げたほか、フィリー繋がりでボーイズIIメンも歌っていた。また、母親に捧げる内容の“Sadie”は、2パック“Dear Mama”やLLクールJが祖母に捧げた“Big Mama(Unconditional Love)”に歌い込まれるなど、ネタ自体がテーマを示唆するほどのクラシック。R・ケリーが亡き母に捧げたカヴァーで知られ、ジェイムズ・テイラーもレコーディングしている。他にもいわゆるロック系カヴァーで聴き応えがあるのは、エレクトリック・シックスによる“The Rubberband Man”。厚いコーラスも交えた昂揚感のある演奏もファンキーでカッコイイが、取り上げたのは彼らもデトロイト出身だからか?
なお、アンカットながらも人気の曲として、シュープリームスがオリジナルの翌年、フィリス・ハイマンが2年後に取り上げた“I Don't Want To Lose You”を挙げておこう。リビー・ジャクソンも歌ったこの曲は、最近モニカが“Until It's Gone”でサンプリングしてシングル・ヒットに至らしめている。
▼関連盤を紹介。
左から、ラッピン4テイの94年作『Don't Fight The Feelin'』(Rag Top/Chrysalis)、ボーイズIIメンの2009年作『Love』(Decca)、2パックの95年作『Me Against The World』(Interscope)、R・ケリーの93年作『12 Play』(RCA)、ジェイムズ・テイラーの2008年作『Covers』(Hear Music)、エレクトリック・シックスの2010年作『Zodiac』(Metropolis)、フィリス・ハイマンの77年作を含む編集盤『The Buddah Years』(Soulmusic)、モニカの2012年作『New Life』(RCA)