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第68回――回り続けるスピナーズ

季節の深まりがリイシュー熱に火をくべる

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2013/11/20   00:00
ソース
bounce 360号(2013年10月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次


数か月サボってたので、その間にいろいろ出てるのはしょうがない。まずは上掲したスピナーズの初期2作も含む、モータウンの設立55周年を記念した千円リイシュー諸作(全100タイトル!)から……チャック・ジャクソンの68年作『Arrives!』(Motown/ユニバーサル)が世界初CD化です! ちょうどマック・ワイルズ君がデビュー作でネタ使いしている“I Like Everything About You”を収めた一枚で、そもそも同曲はATCQの“Butter”にてイントロ部分をサンプリングされたことで有名でしたね。そんなネタ需要はさておいても、レーベル生え抜き組の洗練性とは異なる、パイオニアならではのデトロイト・ソウルが情熱的でイイです。同シリーズの世界初CD化モノでは、スピナーズと同じくV.I.P.の冷や飯食いだったモニターズの68年作『Greetings!... We're The Monitors』(Soul/ユニバーサル)にも注目。後のテンプス構成員を輩出した点やフークワとの縁もスピナーズとかぶるのですが、当時の典型的なモータウン作法に則りつつ厭戦歌も披露するあたりはこの時代ならでは。なお、世界初とかじゃなくても20年近く前にCDになったきりのド定番が多いこのシリーズ、ぜひ店頭でのチェックをオススメします。

また同シリーズ以外でもモータウン音源の復刻は各所で進んでおり、GC・キャメロンとのコラボも有名なシリータがビリー・プレストンと組んだ81年のタッグ作『Billy Preston & Syreeta: Expanded Edition』(Motown/Soulmusic)もここにきて初CD化されました。当時の基準だとカル~いブツだったのかもしれませんが、いま聴けば粋で惚れ込むしかないライトなブギー~ブラコンの佳作としか言えない感じですよ。

で、何か月か前に紹介したブランズウィックの復刻シリーズから、このタイミングで注目したいのはトニー・ヴェイラー・サウンズ・オーケストラの75年作『Gotta Get It』(Brunswick/OCTAVE)の世界初CD化! マリアン・ファーラ&サテン・ソウルの仕掛け人たるトニーが、トム・モウルトンと共に生み出したバリー・ホワイト的なアダルトなディスコ~ブギー世界が恐ろしく気持ち良いので、ジャケ買いでも問題ないはず! で、女性の裸体&水ジャケの世界初CD化繋がりということで、強引にクリークの83年作『Try It Out』(MCA/PTG)も強引に紹介しておきましょう。いかにもLAらしいブライトな男女混合ディスコ・ファンクであります。

で、男女繋がりで……スティーヴ・ワシントンみずからの手でオーラの未発表アルバム『Satisfaction』(Family Groove/DIZZARE)が蔵出しされました。83年の録音で、しかもメンバーがあのオーラじゃないというのも凄いです(詳細は各自入手後に解説を読んで!)。ちなみに蔵出しモノだと、この連載でもフィーチャーしたエディ・ホーランが自身のアルバム未収シングル曲と未発表音源を編纂した『I'm Gonna Speak Out』(HDM/DIZZARE)も出ていますので~。



▼文中に登場した作品を紹介。
左から、チャック・ジャクソンの68年作『Arrives!』(Motown/ユニバーサル)、モニターズの68年作『Greetings!... We're The Monitors』(Soul/ユニバーサル)、GC・キャメロンがビリー・プレストンと組んだ81年のタッグ作『Billy Preston & Syreeta: Expanded Edition』(Motown/Soulmusic)、トニー・ヴェイラー・サウンズ・オーケストラの75年作『Gotta Get It』(Brunswick/OCTAVE)、クリークの83年作『Try It Out』(MCA/PTG)、オーラの未発表アルバム『Satisfaction』(Family Groove/DIZZARE)、エディ・ホーランが自身のアルバム未収シングル曲と未発表音源を編纂した『I'm Gonna Speak Out』(HDM/DIZZARE)