かせきさいだぁから楽しいバケイションへのお誘いが届いたよ!
バック・バンドであるハグトーンズを率い、シティー・ポップの歌い手として躍進するかせきさいだぁ。前々作『SOUND BURGER PLANET』では“ときめきトゥナイト”を、前回の『ミスターシティポップ』では「さすがの猿飛」の“恋の呪文はスキトキメキトキス”をカヴァーし、独自のアニメソング解釈を披露した彼が、ついには丸ごと一枚のアニソン・カヴァー集『かせきさいだぁのアニソング!! バケイション!』をリリースするに至った。
「『SOUND BURGER PLANET』を出したあと、“ときめきトゥナイト”への反応がものすごく良くなっていったんです。それで、ライヴをやっていくうちに(アニソンの)レパートリーが増えていって。今回は最初、アニソン半分、シティー・ポップ半分みたいにしようと思ってたんですけど、どうせだったら全部アニソンのカヴァーのほうがおもしろいということで」。
はたして本作は、細野晴臣『泰安洋行』のエッセンスをまぶした“ときめきトゥナイト”や、鈴木茂“砂の女”のギター・フレーズが聴ける“恋のB級アクション”、トークボックスを使ったディスコティークな“残酷な天使のテーゼ”など、このバンドでしかなし得ない斬新なアイデアが詰まったアルバムになった。なかでも驚かされるのが、シュガーベイブ“DOWN TOWN”を大胆に採り入れた、劇場版「超時空要塞マクロス」のエンディング・テーマ“天使の絵の具”だ。
「原曲のアレンジが清水信之さんで、EPOさん版の“DOWN TOWN”に近いところがあったんです。それをシュガーベイブ版に近付けてしまおうと……なんですけど、コーラスをEPOさんに頼んだので、本当に時空を超えたおもしろいことになってる(笑)。僕は根がヒップホップなので、こんなふうにくっ付けたらどうだろう?って考えるんです」。
また本作は、ある世代限定の懐メロ集に留まることなく、近年の楽曲を含む幅広い年代から選曲されているのもポイントだろう。
「家で仕事してる時はアニメチャンネルをつけっ放しにしているので、アルバム用に曲を探したということはないですね。〈かんなぎ〉もTVで知ったし、“星間飛行”にしても〈この詞は松本(隆)先生じゃない?〉と思って調べたら、やっぱりそうで。すごく良い曲だったので選びました」。
ゲスト陣は先述のEPOのほか、でんぱ組.incの夢眠ねむや、シンガー・ソングライターの柴田聡子(知人のTumblr経由で知ったそう!)など、実に多彩な顔ぶれ。エンディングを飾るのは、古くからの仲間であるカジヒデキと真城めぐみが参加した、件の“星間飛行”だ。
「最後にアレンジしたんですけど、アイデアが枯渇して(笑)。もう奥の手で、自分で渋谷系のパロディーをしようと(笑)。じゃあカジくんと真城さんを呼ばないと、という流れですね。結果的には最後に相応しい曲になりました」。
ラストに待ち受けるオチまで含め、かせきさいだぁだからこそできるユーモアと音楽愛に満ちた充実作になったと言えよう。
「今回はラップもしてないし歌詞も書いていない。自分の武器を放棄しているので、どこかでかせきさいだぁとハグトーンズらしさを出したいっていうのがありました。それと、いまのアニソンってアニメ・ファンのものじゃないですか。僕らが子供の頃はみんなが歌っていた。だからアニソンをオタクっぽくないものとして、もっといろんな人が聴ける格好良いものなんだぜっていうのを示したくて、勝手ながらですけど、アニメに自分なりの恩返しをしたいと思って作りました」。
▼かせきさいだぁの近作。
左から、2011年作『SOUND BURGER PLANET』、2012年作『ミスターシティポップ』(AWDR/LR2)
▼文中に登場したアーティストの作品を一部紹介。
左から、細野晴臣の76年作『泰安洋行』(PANAM)、鈴木茂の75年作『BAND WAGON』(クラウン/Tower To The People)、清水信之の80年作『コーナートップ』(Light Mellow's Picks/Tower To The People)