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好評入荷中!クレメンス・クラウスのワーグナー:『指環』

C.クラウス

ついに正規発売!クレメンス・クラウスによるワーグナー:『指環』!
「新バイロイト」を切り開いた名演がオリジナルマスターから蘇る!
ヴィントガッセンもホッターもヴァルナイも、みんな最高だ!
ついに「クレメンス・クラウスのリング」がORFEO D’ORから正規リリース。この1953年のクラウスのリングは、名演あまたのバイロイト音楽祭の「指環」の中でもとりわけ素晴らしい演奏だったと語り継がれているもの。それはただ単に名歌手、名指揮者が集った豪華な上演というばかりではありません。バイロイト音楽祭1951年に再開されてから手探り状態だった「新バイロイト主義」が、この1953年になってようやく方向性が定まり、それによって後に大物となる若い世代の歌手たちと、ウィーンの名指揮者クレメンス・クラウスの素晴らしい指揮、そしてヴィーラント・ワーグナーの演出がオペラならではの“化学反応”を起こし、輝かしい爆発を起こしているからです。
クレメンス・クラウスのバイロイト出演は、ヴィーラント・ワーグナーと対立したハンス・クナッパーツブッシュが出演辞退したため巡って来ました。クラウスの生み出すワーグナーは、明るく美しくしなやかで、躍動感と熱気に満ち溢れています。ドイツ風のドッシリガッシリしたワーグナーと異なり、旋律を伸びやかに歌わせ、場面に合わせてテンポを柔軟に動かして音楽を煽るので、雄弁かつドラマティックな、とてもエキサイティングなワーグナーです。クラウスのバイロイト出演は大好評になりましたが、翌1954年5月にクラウスが急死してしまい、彼のバイロイトはこの一年だけ、「指環」は第2チクルスの1回だけに終わってしまいました。その意味でもこの「指環」は貴重な録音です。
1953年の「指環」上演では、1951、52年からの引継ぎ歌手に加え、多くの新しい世代の歌手が投入されました。そして彼らの多くは1950、60年代に活躍する偉大なワーグナー歌手へと成長していきます。特に絶賛されたのが、名ヘルデン・テノール、ヴォルフガング・ヴィントガッセン。この年初めてジークフリートに大抜擢されたヴィントガッセンがいかに新鮮な驚きだったのかは、「ジークフリート」での聴衆の熱狂ぶりで明らかです。39歳のヴィントガッセンは、後の録音と比べて声がずっと若く瑞々しく、たいへん魅力的です。ヴォータン/さすらい人にはハンス・ホッターが初めてフル起用されました。「20世紀の後半の」という括りを入れなくても「最高のヴォータン」と言って過言でないホッター、彼もまた後年よりも遥かに声に張りとツヤ、そして力強さと威力があり、ことに「ラインの黄金」は圧巻。全盛期のホッターがいかに物凄い歌手だったかを証明してくれます。ブリュンヒルデのアストリッド・ヴァルナイは、いまだ「録音で聞ける最高のブリュンヒルデ」に挙げる人も少なくない名ソプラノ。ことに女性らしい感情描写は、その後のブリュンヒルデでヴァルナイを凌ぐ人はいないでしょう。1950年代末になると高音に翳りが出るヴァルナイも、1953年は素晴らしく美しい声で、持ち前の体当たり的歌唱と相まって最高です。バイロイトで実に1975年まで20年以上に渡って頻繁にアルベリヒを歌った「極めつけのアルベリヒ」であるグスタフ・ナイトリンガーもこの頃が全盛期。朗々と響く美声と暗く屈折した感情表現が見事に融合しており、ホッターとの丁々発止はスリリングきわまりありません。ジークムントには、既にオテッロで世界的大成功を収めていたドラマティック・テノールのラモン・ヴィナイを起用。暗く力強い声によってジークムントの悲劇性がいや増しています。他にも、ヨゼフ・グラインドルとルートヴィヒ・ウェーバーの二大名バス、クールでニヒルなエーリヒ・ヴィッテのローゲ、演劇的上手さではいまだこれを凌駕するミーメはないというほど巧いパウル・クーエン、今だったらヴォータンとして引っ張りだこになりそうな素晴らしいバリトン、ヘルマン・ウーデのドンナーとグンター、名コロラトゥーラ・ソプラノ、リタ・シュトライヒの森の小鳥、など、とにかく隅々まで充実したキャストです。
今回はバイエルン放送協会所蔵のオリジナル・マスターを使用しています。1953年としてはかなり良好な録音で、従来出回っていた盤よりかなり音質向上が感じられます。また従来のCDの多くでは、初出LPのマスターを転用したためか、LPの面に合わせて切ったテープを再び接合したためにできたと思しき継ぎ目で不自然な空白が生じていましたが、今回はオリジナル・マスターを使用したことで、そうした邪魔な継ぎ目はほぼ一掃されています。
1956年のクナッパーツブッシュが指揮した「指環」が、新バイロイト様式が安定した時期のこの上なくスケール雄大な演奏だとすると、このクラウスの「指環」は、新時代への扉が開かれた時特有の、出演者と観客が興奮の渦に巻き込まれるような熱い演奏。クラウスも含め初出演者が多いことであちこちでミスが散見されたりするものの、それでもかまわず新時代へと突き進もうとする演奏は、ワグネリアンはもちろん、あらゆるオペラファンに聞いてもらいたい、奇跡的な名演です。

※ORFEO D’ORレーベルからのその他の要注目タイトルは、こちら。

 

カテゴリ : ニューリリース

掲載: 2010年10月12日 12:02

更新: 2010年10月15日 18:28