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入荷しました!『日本作曲家選輯』最新作~「松村禎三作品集」

松村禎三

戦後の日本作曲界でも独自な頂点を極めた作曲家、松村禎三
本来なら輝かしい青年時代を過ごすはずであった20歳代の始めに、結核のため5年半もの療養生活を送ったことが、彼の作風に大きな影響を及ぼしているという。身動きのできないベッドの上で、一つのものを徹底的に見つめるという「作業」は音楽だけでなく、言葉を自在に操ることにもつながり、その後の彼は俳句の世界にも大きな足跡を残すこととなる。
1965年に作曲された「交響曲第1番」は、日本フィルハーモニー交響楽団の日本の作曲家への委嘱初演企画「日フィルシリーズ」第14作目として作曲されたもの。当時携わっていた映画音楽で培った管弦楽法と、彼独自の思想「アジア的な発想をもった、生命の根源に直結したエネルギー」が見事に結実した作品であり、湧き上がる音の奔流に圧倒されるのは間違いない。
「交響曲第2番」はサントリー音楽財団の委嘱を受けて作曲された。1999年に再演(その時に第3楽章を改訂)。2006年には湯浅卓雄指揮によるこのレコーディングのために再改訂を行い、これが結果的に最終稿となった。列車の中で、偶然、興福寺の金剛力士像のポスターを見た松村は、その筋肉隆々の恐ろしい姿の中に、哀しみの光を見出したという。第1番の交響曲から35年の月日が流れ、彼の視点も「アジア的」なものから、もっと大きなものへと移っていく。人間の持つ苦悩、哀しみ、希望…。そのようなものが根底に流れている。ピアノを伴う管弦楽の響きは様々なものを聴き手へと伝えゆく。
「ゲッセマネの夜に」は彼の最後の管弦楽作品である。当時オーケストラ・アンサンブル金沢のコンポーザー・イン・レジデンスであった松村は、同団の委嘱を受けてこの曲を作曲した。ゲッセマネとは、キリストがイスカリエオのユダの裏切りにあい、捕えられた場所であり、ユダが銀貨30枚でキリストを売り渡してしまう場面を緊迫感を持った音で描いている。 この頃キリスト教の洗礼を受けていた松村が、ジョットの絵の複製を見ながら構想を練ったというもので、イエスのまなざしは、ユダだけでなく、全ての人間の持つ哀しみまでを見通し、曲の最後は美しいヴァイオリン・ソロで祈るかのように終わりを迎える感動的な曲である。

【神谷郁代(ピアノ)】
井口愛子氏に師事。桐朋学園高校卒業の年に毎日音楽コンクール第一位受賞。エッセン音楽院卒業。クラウス・ヘルヴィッヒ、ステファン・アスケナーゼらに師事。1972 年、エリザベート王妃国際音楽コンクールに入賞。その後、ヨーロッパ各地で音楽祭、リサイタルなど活発な演奏活動を展開。レパートリーはドイツ古典からから現代曲までと幅広い。
【湯浅卓雄(指揮)】
大阪府に生まれ、シンシナティ大学音楽院作曲理論科を経て、ウィーン国立音楽大学指揮科でハンス・スワロフスキーに師事。長年ロヴロ・フォン・マタチッチの助手を務める。NAXOS日本作曲家選輯での一連の演奏は、どれも「比類なき名演」として知られる。現在、最も高く評価されている日本人指揮者の一人である。

日本作曲家選輯

【日本作曲家選輯シリーズ】

 

カテゴリ : ニューリリース

掲載: 2010年12月06日 09:42

更新: 2010年12月10日 18:16