才色兼備の新星 フランチェスカ・タンドイ
女神、降臨。弾むピアノ、艶やかなヴォーカル。才色兼備の新星があなたを魅了します。
気になります。彼女の胸の、鍵の形のペンダント・トップ。新星、フランチェスカ・タンドイ…男性が美女に弱いことは時代の古今、洋の東西を問わず、そして、男性がそれに向かいあう時には、持ち前の誇大妄想がより膨らむのである。その鍵で開くべきなのは、アナタの心なのですか?くらいの飛躍は朝飯前の夜明けの夢。
そも、かの名手モンティ・アレキサンダーが、ライナーで彼女のピアノを「演奏は良い、曲は良い、アレンジも良い」と褒めちぎった上で、ヴォーカルについてさえ「風変わりなアクセントが魅力」…何せ褒めたいんだろう…と言っている。アナタ、もしかして彼女の色香に惑ってるだけじゃないんですか?とツッコミ入れるのだが…。実際聴いてみると、男であるがゆえの目(いや、耳)の曇りでないことはすぐに分かった。
タイトル曲のワルツ“For Elvira”は確かに女性ならではの美しさを感じるが、スゥインギーな“In A Mellow Tone”、快調に飛ばす“Parker 51”などにこそその本領はある、と思う。個人的には彼女のオリジナルであるブルーズ・ナンバー“Mice's Blues”がフェイバリット。ボビー・ティモンズばりのタメを利いた節回しに思わずニンマリする。4曲で披露されるヴォーカルは、素直に歌いこなしていて、これもまた確かに素敵だ。
イタリア生れ、オランダのハーグ王立音楽院で学んだ才媛を見出したのはヨス・ヴァン・ビースト、なるほど、「サワノの音」である。気がつくと、何度も繰り返して聴いていた。おや?そうすると、彼女の鍵が開くのは、リスナーの心の扉、だったのかも知れない。(ライナーノーツより:Text by 北見柊)