福田進一×平野啓一郎。小説『マチネの終わりに』完全タイアップCDが登場!
作家・平野啓一郎が毎日新聞朝刊で連載した『マチネの終わりに』が2016年4月に毎日新聞社より単行本が発行。
天才ギタリストの蒔野聡史と通信社記者の小峰洋子の二人を軸にした恋愛小説。40代の苦悩、スランプ、PTSD、戦争、生と死、父と子、師弟、嫉妬等、様々なテーマが複雑に絡み合い、読者を魅了しました。クラシックギタリストが主人公であり、世界的ギタリストの福田進一が構想の段階から平野に助言し、小説全編にわたって登場する多数のギター曲を、福田の演奏で収録。物語のカギとなる架空の映画音楽「幸福の硬貨」を平野のイメージに忠実に従い、新進気鋭の作曲家林そよかがオリジナル曲を作曲。ここで初めて耳にすることができます。
小説に登場するギター曲をYou Tube検索し、物語と合わせて聴いている読者が多数いるという中、大人の恋愛小説を福田進一のギターで、さらに物語を立体化して楽しむことができるでしょう。
選曲は平野啓一郎と福田進一。ブックレットのデザインは、毎日新聞とWEBで同時連載が敢行された『マチネの終わりに』の挿画、本の装丁を担当したデザイナーの石井正信。
(日本コロムビア)
©Takanori Ishii
音楽の世界にかかわらず、世に名教師と言われる人たちは、ある共通項で結ばれているようです。それは、その門から巣立って一家を成した弟子たちが、パターン化することなく、それぞれが際立った個性を輝かせていること。彼らは誰一人として、恩師にそのスタイルが似ているなどと言われることはありません。
日本ギター界のゴッドファーザーと称される福田進一も、その意味で、世界に誇るべき名教師の一人でしょう。鈴木大介、村治佳織、大萩康司、朴葵姫。演奏会やレコーディングで目立った活躍をしている門下生を並べてみても、その個性の違いが凄まじくて、とても同じ学校の卒業生とは思えません。良い教師の下には良い生徒が集まってくる、というアドバンテージを差し引いても、福田進一がそれぞれの弟子の個性を見極めて、その個性をより良い方向に伸ばす手法に長けていることに間違いはないでしょう。
そんな弟子の秘めた個性を引き出す能力をもった福田は、作曲家が願った音楽の本質を見極めて、それを実際の音にすることにも図抜けた手腕を発揮します。作曲家が譜面に書き切れなかった音楽のナマの姿を、演奏で再現してくれるパワーとでも申せましょうか。それは楽譜に秘められた躍動感であったり、寂莫感であったり。そんな福田の姿は、作曲家の書いた譜面を完全に自分の「歌」にしてしまう歌謡曲の歌手たちを想い起こさせます。楽譜に書いてあるとおりではなく、楽譜に書き切れなかったものを見つけだして音楽にする。いにしえの巨匠たちが当たり前のようにもっていた能力を、嬉しいことに福田進一は今、この21世紀に発揮してくれているのです。
今回のCDは、小説で取り上げられた作品を楽しむといった目的もあり、過去の音源からの再利用も多いようです。しかし、このアルバムのために若手作曲家、林そよかが書き下ろした新曲に是非ご注目を。小説家がギターの世界を物語にしたように、福田進一はその物語をきっと素晴らしい音楽で逆表現してくれていることでしょう。
(タワーレコード)
【収録曲目】
第1章:出会いの長い夜~
1. ロドリーゴ:アランフェス協奏曲より II. アダージョ
2. レノン&マッカートニー(武満徹編):イエスタデイ
第3章:《ヴェニスに死す》症候群~
3. J.S.バッハ(福田進一編):無伴奏チェロ組曲第3番BWV1009より I. プレリュード第4章:再会~
4. F.ソル:幻想曲 Op54bis より II. アレグロ
第5章:洋子の決断~
5. バリオス:大聖堂
6. ヴィラ=ロボス:ガヴォット・ショーロ
7. アームストロング(鈴木大介編 ):この素晴らしき世界
8. 林そよか:幸福の硬貨
第8章:真相~
ピアソラ:タンゴ組曲より
9. II. アンダンテ
10. III. アレグロ
第9章:マチネの終わりに~
ブローウェル:黒いデカメロンより
11. I.戦士のハープ、
12. III.恋する乙女のバラード
13. ブローウェル:ギター・ソナタより“パスキーニによるトッカータ”
[ボーナストラック]
14. 林そよか:幸福の硬貨 ~洋子に捧ぐ
【演奏】
福田進一(ギター)
飯森範親(指揮)ヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団 (1)
オスカー・ギリア(ギター)(4)
エドゥアルド・フェルナンデス(ギター)(9,10)
【新録音】
2016年7月14日、Studio A-tone YOTSUYA(3,6,7,8,12,14)
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2016年09月14日 00:00