ノットのマーラー“大地の歌”VPO盤に先んじてバンベルク響盤がリリース(SACDハイブリッド)
2003年から2011年にかけて録音が行われたジョナサン・ノットとバンベルク響によるマーラー:交響曲全集録音チクルスはディスクが発売されるごとに各方面から称賛の声が聞かれ話題を集めたものです。その後あらためてボックス仕様の形でマーラー交響曲全集として発売されましたがディスクは第1番から第9番まで。その頃からいったい「大地の歌」はどうなっているのかとのファンからのお声がちらほら聞かれました。そんなわけでようやく、待望のリリースです。録音はつい昨年の2月にバンベルクで念入りに行われたセッション録音。
※ジョナサン・ノットはウィーン・フィルとも「大地の歌」を録音しましたが、そちらはテノールのカウフマンが一人で全部歌ってしまった代わりダネでした。このベンベルクでの声楽陣はバーンスタイン&ウィーン・フィルの録音でも採用され、その後も時々行われているテノール、バリトン歌手によるバージョンです。
※一聴して感じるのはバンベルク響の柔らかく耽美的な音色です。蜜のように滴る甘いホルンの響き、官能の極みのような木管、弦楽セクション。ノットは繊細きわまるこの作品の室内楽的書法を注意深く再現しつつ、どこまでも優美に陶酔感をもって進みます。またTUDOR特有の優れた録音技術も特筆に値し、各声部の細やかな旋律の綾も鮮やかにとらえられています。人生の無常を謳ったこの作品をこれほどまで枯淡の境地から程遠く、悩ましく官能的、耽美的に演奏したディスクは近年珍しいでしょう。因みにテノールのロベルト・サッカはマゼール、小澤征爾、ハーディングらと共演、2015、16年にはミラノ・スカラ座に「ヴォツェック」(!)でデビュー、バリトンのスティーヴン・ガッドはキャリアの最初にキャスリーン・フェリアー奨学金を得たのも今回の録音との何かの縁か、その後プラシド・ドミンゴ・オペラ・コンペティション上位入賞、世界各地の歌劇場で目覚ましい活躍を続けている、いずれも今、もっとも脂の乗り切った歌手たちです。
(東武ランドシステム)
マーラー:交響曲《大地の歌》
演奏タイミング[8:03][10:18][3:06][7:15][4:15][28:29]
ロベルト・サッカ(テノール)、スティーヴン・ガッド(バリトン)
ジョナサン・ノット(指揮)バンベルク交響楽団
録音:2016年2月8-13日バンベルク・コンツェルトハレ・ヨゼフ・カイルベルト・ザール
※定評あるTUDORのSACD hybridの優秀録音、SURROUND SOUND 5.1。
こちらも注目!ノット&ウィーン・フィルの“大地の歌”
現在最高の人気を誇るテノール歌手として充実した活動を続けるヨナス・カウフマンのニュー・アルバムはウィーン・フィルと共演したマーラー「大地の歌」を何と全曲一人で歌い通した話題の公演のライヴ録音。交響曲と歌曲を融合させたかのような作品で、中国の李白、孟浩然、王維らの漢詩を自由に翻案した歌詞が付された全6楽章を、通常は声域の異なる2人の歌手が歌い分けますが、ここではカウフマンが一人で歌い尽くしています。まさに前人未到の領域へのチャレンジであり、ノリにのっているカウフマンならでは。ウィーンでは「この作品の構想のスケールの大きさが、一人の歌声によって統御される様は感動的」と絶賛を受けました。
マーラーが首席指揮者を務め、ワルター、バーンスタインなど時代に応じての「大地の歌」名盤を生み出してきたウィーン・フィルの鮮明かつ濃厚な響き、そして1962年イギリス生まれ、東京交響楽団・スイス・ロマンド管の音楽監督でもあるジョナサン・ノットの指揮という、まさに最適のパートナーが起用されており、カウフマンが満を持して挑んだマーラー録音を十全にバックアップしています。日本盤のみ高品質Blu-specCD2仕様。
(ソニーミュージック)
【曲目】
マーラー:大地の歌
【演奏】
ヨナス・カウフマン(テノール)
ジョナサン・ノット(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団