クリスティアン・ゲルハーヘル再録音! シューベルトの歌曲集「美しき水車小屋の娘」
今やドイツ・リート界での最高峰として揺るぎない評価を確立しているバリトン、クリスティアン・ゲルハーヘルによる新録音は、何と14年ぶりの『美しき水車小屋の娘』の再録音です。
ゲルハーヘルの名を日本のリート・ファンの間で根付かせたのが1999~2003年にかけてアルテ・ノヴァ・レーベルに録音されたシューベルトの3大歌曲集であることは論を待たないでしょう。3つの歌曲集すべてを高い水準で聴かせ、『冬の旅』ではレコード・アカデミー賞声楽曲部門を獲得するなど、リート・ファン必携のアルバムとなりました。
『水車小屋』の旧録音は3大歌曲集の中で最後に録音されましたが、1枚1枚完璧なまでの彫琢ぶりを聴かせてきたゲルハーヘルが今回敢えて14年ぶりに『水車小屋』の再録音に踏み切ったのは、シューベルトが付曲しなかったヴィルヘルム・ミュラーの詩5編に対する深い愛着とこだわりの故であるといえるでしょう。
シューベルトが1823年に『水車小屋』を作曲した時、ミュラーの25編の原詩のうち、20曲を選んで付曲しています。シューベルトが付曲しなかった冒頭の「プロローグ」と結尾の「エピローグ」を含む残りの5編については、ゲルハーヘルは『水車小屋』の主人公の心理の変化を提示する上で欠かすことのできない重要な詩と考えており、アルテ・ノヴァ盤ではブックレットに敢えて詩だけを掲載していました。
今回はその5編の詩を自ら朗読しており、印刷された詩を読むだけでなく、ドイツ語の音として耳にし、ミュラーが構想した『水車小屋』の全貌を追うことが出来るようになりました。もちろんゲルハーヘルの表現力の深化も圧倒的で、聞くだけでドイツ語のニュアンスが明解に立ち上ってくるような明晰なディクション、包み込むような美しい音色、張りのある力強さ、そして深い響きがシューベルトの歌曲の神髄を伝えます。
ゲルハーヘルの寄り添い、言葉と音楽のニュアンスをさらに深く結びつけているのがフーバーのピアノ。今や名伴奏者ジェラルド・ムーアの域を飛び越え、ゲルハーヘルとともにリート芸術の新たな表現領域を開拓しています。
(ソニーミュージック)
【曲目】
シューベルト:歌曲集『美しき水車小屋の娘』D.795(全曲)
【演奏】
クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)
ゲロルト・フーバー(ピアノ)
【録音】
2016年6~7月、ミュンヘン、バイエルン音楽スタジオ(デジタル:セッション)
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2017年09月06日 00:00