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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.6

『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』(1955)

HELEN

ヘレン・メリル(vo)、クリフォード・ブラウン(tp)
ダニー・バンクス(bs)、ジミー・ジョーンズ(p)、バリー・ガルブレイス(g)
オスカー・ペティフォード(b, cello)、ミルト・ヒントン(b)、オシー・ジョンソン(ds)
クインシー・ジョーンズ(arr, cond)

1954年12月22、24日 ニューヨークにて録音

曲目:
1.ドント・エクスプレイン
2.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ
3.ホワッツ・ニュー
4.恋に恋して
5.イエスタデイズ
6.ボーン・トゥ・ビー・ブルー
7.スワンダフル

【アルバム紹介】
1.その独特の歌声はハスキーで妖艶、まさに“ニューヨークのため息”
2.凄すぎるバック・メンバーが参加。天才トランペッターのクリフォード・ブラウン、アレンジはクインシー・ジョーンズ
3.2曲目が80年代にCM曲オンエアにより、当時の若い音楽ファンの認知度もアップ

前回ご紹介さしあげましたチェット・ベイカーの歌声は他のどのシンガーにもない魅力でしたが、女性ジャズ・ヴォーカルの中で、ワン・アンド・オンリーな、ハスキーで妖艶な歌声で知られているシンガーといえばヘレン・メリル。その独特のヴォーカルは“ニューヨークのため息”と呼ばれてジャズ・ファンにはお馴染みです。

ニューヨーク生まれのヘレン・メリルは1940年代の半ばから歌い始め、1954年の暮れにレコーディングされた本作は彼女にとってのデビュー・アルバムになります。この時24歳。名スタンダードをじっくりと歌い上げてゆく歌唱は生まれながらに「何か」を持っているなと思わせる存在感があり、ハスキーな歌声が“大人の香り”が漂わせます。

また、そんな彼女をバックアップするメンバーとして強力なミュージシャンが参加していることが本作の名声を高めている理由だとも言えます。トランペットは天才クリフォード・ブラウン、この時同じく、24歳。そして、コンボのアレンジと指揮を行っているのが、現在もなお、長年にわたってポピュラー音楽界のリヴィング・レジェンドとして君臨しているクインシー・ジョーンズ。この時はなんと21歳。まるで歌えてしまえそうなほどのメロディアスなソロをきめるクリフォード・ブラウンのプレイ、そして素晴らしいアンサンブルでヘレン・メリルの歌と楽曲を華やかに彩るクインシーのアレンジ。この3者でなくては完成しなかった音楽がここにあります。

収録曲はコール・ポーター、ジョージ・ガーシュイン、リチャード・ロジャース、ジェローム・カーンといったジャズ・スタンダード曲をたくさん世に送り出している作曲家の名曲ばかりで、その中でも名唱と名高いのがコール・ポーター作の2曲目“ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ”。イントロ、歌唱、間奏のソロ、すべて完璧な演奏で、非常にキャッチーな印象さえしますが、80年代には時計のCMでオンエアされ、スタイリッシュなCM映像とともに、その当時のMTV世代の若い音楽ファンにも浸透しました。それゆえ、ヘレン・メリルといえばこの曲、というぐらい代名詞的な1曲になっています。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
イントロ、歌い出し、ソロの吹き始め、それぞれ“入り口”の完成度が高い“ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ”。

先述の通り、80年代にTVCMでオンエアされたことで一気に認知度が高まった、このヘレン・メリルの歌唱バージョン。この曲の大きな特徴でもありますが、イントロ、歌い出し、ソロの始まり、とそれぞれの“入り口”がとても印象的です。イントロはやはりアレンジがクインシー・ジョーンズなので、キャッチー度が全然違います。そのイントロに導かれて、“ユッビーソ~”とどこかルーズな感じで歌いだすヘレン・メリル、間奏はピアノの後に入ってくるクリフォード・ブラウンの吹き始めのフレーズのインパクトの強さ。ジャズの名唱、名演はやはり最初に出した音でその出来が決まっているということでもあります。
この曲は数々のバージョンが存在しますが、インストゥルメンタルのバージョンで聴くなら、アルト・サックスのアート・ペッパーが1957年にリリースした名盤『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』に収録された1曲目がおススメです。
日本人のカヴァーではJ-POP系シンガーのJUJUが2011年に初めてリリースしたジャズ・アルバム『DELICIOUS』の2曲目を聴いてみるとよいでしょう。アレンジはヘレン・メリルと同じクインシーのアレンジでやっています。

ところで今から10数年前のこと、某雑誌(音楽誌ではありません)がタワーレコードの大特集をしたとき、ヘレン・メリルさんが渋谷店でお買い物をする、という記事が掲載されました。見開きのページにはタワーの袋を持ち、ジャズ・フロアにたたずむヘレンさんの姿。お買い上げのCDはジョン・コルトレーン『至上の愛』、マイルス・デイヴィス『ポーギーとべス』、ナット・キング・コールの10枚組廉価ボックス、そしてクラシックを2枚。ナット・キング・コールのようにシンプルな編成でのアルバムを作ってみたい、と語っていたことが書かれており、懐かしさとともに思い出してみました。

SHM-CD国内盤(一般普及盤)

 

輸入盤

 

輸入盤LP

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2018年12月14日 10:00