瀬尾和紀の最新アルバムは近代の無伴奏フルートのための作品集『モダン・タイムズの妙巧』
[Virtus Classics 公式チャンネルより]
真のヴィルトゥオージティとは何かを問う「グラドゥス・アド・パルナッスム」
近年、ピアノ演奏やプロデューサーとして多彩な活動をする瀬尾和紀が、本来の楽器であるフルート、それも無伴奏作品でその真価を問う1枚が登場。
選ばれた作品はカルク=エーレルトの「30のカプリス」を中心に、ドホナーニ、ヒンデミットの近代作曲家の小品と、瀬尾自身がアレンジしたJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より「チャッコーナ」というもので、2本のフルートで演奏されるヒンデミットの「カノン風ソナチネ」には、彼の師であるパトリック・ガロワが参加。なんとも贅沢で聴きごたえのある1枚に仕上がっています。
カルク=エーレルトはドイツ後期ロマン派のオルガニスト兼作曲家。木管楽器のための作品も数多く、なかでも第一次世界大戦中、軍楽隊でライプツィヒ・ゲヴァントハウスのフルーティスト、カール・バルトゥザット(Carl Bartužat)と親交を持ったことでフルートのための重要な作品を残しました。この「30のカプリス」は副題に"グラドゥス・アド・パルナッスム=パルナッソス山への階梯"と付けられており、芸術や学問の聖地とされるパルナッソス山へ段階を踏んで登っていくように、高度な技術を磨いていくための練習曲との意味合いを持つ曲集。フルートを愛する人ならば、ぜひ聴いていただきたい重要な作品です。
最後に置かれたバッハのチャコーナでの緊張感に満ちた音楽も聴きどころ。
(ナクソス・ジャパン)
『モダン・タイムズの妙巧』
【曲目】
ジークフリート・カルク=エーレルト:ソナタ・アパッショナータ 嬰ヘ短調 作品140
Sigfrid Karg-Elert (1877-1933)
1. Sonate appassionata in fis-moll, Op. 140 (1917)
パウル・ヒンデミット: 8つの小品
Paul Hindemith (1895-1963) 8 Stücke für Flöte allein (1927)
2. No. 1 : Gemächlich, leicht bewegt
3. No. 2 : Scherzando
4. No. 3 : Sehr langsam, frei im Zeitmaß
5. No. 4 : Gemächlich
6. No. 5 : Sehr lebhaft
7. No. 6 : Lied, leicht bewegt
8. No. 7 : Rezitativ
9. No. 8 : Finale
エルンスト・フォン・ドホナーニ: パッサカリア 作品48-2
Ernst von Dohnányi (1877-1960)
10. Passacaglia for flute solo, Op. 48-2 (1959)
パウル・ヒンデミット: カノン風ソナチネ 作品31-3
Paul Hindemith (1895-1963) Kanonische Sonatine für Zwei Flöten, Op. 31-3 (1923)※
11. I. Munter
12. II. Capriccio / Langsame Achtel
13. III. Presto
※パトリック・ガロワ(第2フルート) Patrick Gallois, second flute
ジークフリート・カルク=エーレルト: 30のカプリス 作品107
Sigfrid Karg-Elert (1877-1933) 30 Capricen für Flöte allein, Op. 107 (1917)
14. No. 1 : Tempo giusto
15. No. 2 : Un poco mosso, ma non brillante
16. No. 3 : Allegro alla Händel (non troppo brillante)
17. No. 4 : Velocissimo e brillante
18. No. 5 : Allegro giusto
19. No. 6 : Appassionato e stretto
20. No. 7 : Moto perpetuo
21. No. 8 : Con molto brio
22. No. 9 : Rapido e brillante
23. No. 10 : Leggero e veloce
24. No. 11 : Velocissimo e molto leggero
25. No. 12 : Leggero, grazioso e veloce
26. No. 13 : Leggerissimo e grazioso
27. No. 14 : Moto perpetuo
28. No. 15 : Mosso e leggerissimo
29. No. 16 : Un poco mosso, umoristico
30. No. 17 : Leggero veloce, giocoso
31. No. 18 : Adagio (quasi cadenza)
32. No. 19 : Vivacissimo, scintillante
33. No. 20 : Ardito capriccioso ed assai mosso
34. No. 21 : In tempo di Walzer
35. No. 22 : Agitato ed appassionato
36. No. 23 : Adagio appassionato (quasi recitativo)
37. No. 24 : Rapido quanto e possibile (con suono sempre aguzzo)
38. No. 25 : Un poco vivace e capriccioso
39. No. 26 : Capriccioso, con civetteria
40. No. 27 : Un pochettino mosso (ben articolato)
41. No. 28 : Sciolto, elegante e rapido
42. No. 29 : Velocissimo e frizzante
43 No. 30 : Chaconne
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ/瀬尾和紀編曲 チャッコーナ(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調WV 1004より)
Johann Sebastian Bach (1685-1750)
44. Ciaccona, aus der Partita Nr. 2 in d-moll, BWV 1004 (1720)/arr. Kazunori Seo (2004)
【演奏】
瀬尾和紀(フルート)
Kazunori Seo, flute
【録音】
2006年~2010年、フィンランド、ユヴァスキュラ近郊
フルートの美点を保った上での限界点の追求という困難な課題に立ち向かう瀬尾の演奏は、まさに堅牢な土台の上に大伽藍を描いたもの。近代フルート音楽における無伴奏作品の存在意義をあらためて知らしめた珠玉の一枚。(西村 祐)
<瀬尾 和紀 フルート>
1998年、パリ国立高等音楽院を首席で卒業すると同時に、ニールセン、ランパル、フランセ、ジュネーヴなど国際コンクールで立て続けに優勝・入賞を果たした瀬尾和紀は、ただちにソリストとして脚光を浴び、日本はもとよりヨーロッパ諸国や北南米、また中国、台湾、韓国などのアジア諸国において演奏活動を行っている。
日本においては1999年に東京都交響楽団とイベールのフルート協奏曲を共演してデビュー以来、東京シティ・フィル、新日本フィル、日本フィル、読売日本交響楽団、札幌交響楽団、大阪フィル、広島交響楽団、九州交響楽団など各地のオーケストラからソリストとして招かれ、バロックから現代の協奏曲に至るまで幅広いレパートリーで共演を重ねている。その他、2006年にはフランスの作曲家アンリ=ジャン・シュブネルが瀬尾のために書き下ろしたフルート協奏曲をシンフォニア・フィンランディアと初演。また2016年にはドイツ・ハンブルクの新進気鋭の弦楽合奏団《アンサンブル・レゾナンツ》から招かれ日本公演の際のソリストとして共演したほか、2020年にはロシアの名門マリインスキー歌劇場管弦楽団とペンデレツキのフルート協奏曲を演奏するなど、海外オーケストラとの共演も多い。
レコーディング活動も精力的に行っており、NAXOSレーベルでデビューした瀬尾は現在まで同レーベルから11タイトルのCDをリリース。エラート/ワーナー・ミュージックでも録音したのち、現在は、自ら「レ・メネストレル」と「ヴィルトゥス・クラシックス」の2つのCDレーベルを立ち上げ、自身の録音の他、レコーディング・プロデューサーとしても活動している。 近年はフルーティストとしてのみならず共演ピアニストとして活動の場を広げ、師であるパトリック・ガロワとのデュオ・リサイタルや録音活動も行うなど多事多端。
音楽監督として秋吉台ミュージック・アカデミー(山口県)を主宰する他、名古屋音楽大学客員准教授を務めるなど教育活動にも取り組む。これまでに京都芸術祭賞(1999年)、北九州市民文化賞(2000年)、福岡県文化賞(2004年)を受賞。
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2022年04月15日 00:00